2017年11月30日木曜日

藻類バイオの領域公開シンポジウム

「藻類・水圏微生物の機能解明と制御によるバイオエネルギー創成のための基盤技術の創出」領域の平成29年度研究成果報告会(領域公開シンポジウム)が、11月30日に新宿NSビルにて開催される。http://www.jst.go.jp/presto/bioenergy/info/event_5.html

この研究報告会は、科学技術振興機構(通称JST)の戦略的創造研究推進事業CREST・さきがけの領域の成果を一般に公開するものである。

戦略的創造研究推進事業とは、科研費と異なり国の戦略目標に向けた基礎研究を行うJSTの事業である。この領域は、藻類や水圏微生物を使って、バイオエネルギー・バイオマテリアルの生産を行うなど環境・エネルギー問題の解決に資する基礎技術を研究・開発するプロジェクトである。研究総括は東京農工大学の前学長である松永是先生である。

CRESTはチーム型研究、さきがけは個人型研究で予算を配分していただける。2011年度から2014年度までさきがけ専任研究者として採用していただき、シアノバクテリアの代謝工学の基礎研究とバイオプラスチックであるPHB生産法の開発を行った。大変お世話になり、がっつり鍛えて頂いた。さきがけには感謝の念しかない。

さきがけを取ると研究者人生が変わると言われるが、これは過言ではない。若手にとっては非常に大きな予算がついて、これを基盤として独立的な研究体制を整えることができる。実際にさきがけをベースに環境バイオテクノロジー研究室もできたといっても間違いではない。

また、それ以上に予算の使い方を学ぶというのも大きい。非常に効果的な使い方もあれば、せっかく費やしたので成果が上がらないこともある。こういう予算の動かし方を学んでいったのも非常に大きい。

そして、人的交流が広がったことも大きいだろう。さきがけを取るような人たちと年2回も合宿形式で研究会を行うので、非常に強いつながりができる。

さらに素晴らしいことであるけれど、自分の研究に対して、著名なアドバイザー(10名程度)と他のさきがけ研究者ががんがん意見を言ってくれるのである。

別のとある「若手を育成します!」と標榜する泊まり込み形式の会議に参加したことがあるが、実際には著名な先生たちが自分の発表をして、若手はポスター発表で終わりというようなものがあった。さきがけ領域会議を経験した身だったので、なんと味気ない会だろうと思ったことがある。逆に言えば、さきがけの領域会議がそれほど鍛えてくれるようにできているのである。

今年で藻類バイオエネルギーの全プロジェクトが終了するということで、最後の研究成果報告会になる。CREST・さきがけの領域会議は研究内容もさることながら、人的交流の発展に多大に寄与する。現在も共同研究を行っている方々は、この領域会議で出会った人が多い。恐ろしく優秀な方々が集まっているので、とても刺激になる(その分、参加した後は、びっくりするくらい疲れる・・・)。

今回は発表の機会を頂いたので、何を喋ろうか楽しみにしている。さきがけの後に明治大で研究室を構えたので、新しくできた環境バイオテクノロジー研究室の話をしたいと考えている。いつもサイエンス以外の余分な話が多くて苦言をいただくこともあるのだけれど、今の時代、論文の内容をしゃべるだけだったら研究会は必要ない気がするので、どうかご容赦頂きたい。

さきがけの領域会議。あの厳しくも楽しい会議を思い出すととても懐かしく、(緊張して)背筋が伸びる思いである。

2017年11月29日水曜日

cDNA合成とリアルタイムPCR

リアルタイムPCRは、mRNA量を測定する有効な方法である。現在ではmRNAの定量法の主役と言っても良い。一昔前はノーザンブロットが主役であったが、手間を考えるとリアルタイムPCRの方が上である。ただし、試薬や消耗品のコストがそれなりにかかる。

抽出したDNase処理を行ったRNAを用いて、cDNAの合成(逆転写反応)とリアルタイムPCRを行う方法である。

cDNA合成はInvitrogenの試薬、リアルタイムPCRはABIのStepOnePlusを用いて行っている。

原核生物の場合はRandom hexamer primer、真核生物はpoly (dT) primerを用いて逆転写反応を行う。

cDNAの合成
DNase処理を行ったRNAを用意する。

RNA                         X μL (RNA 2 μg分、生物や遺伝子によって変える)
Random hexamer     1 μL
10 mM dNTP mix     μL
DEPC-treated water up to 10 μL
2本ずつ用意する。

65℃、5 minインキュベート

on ice

10 μLのcDNA synthetsis mix(RT+ or RT-)を加える。
※cDNA synthesis mix 4本分
10x RT buffer        9 μL  
25 mM MgCl2       18 μL
0.1 M DTT             9 μL
RNaseOUT            4.5 μL
SuperScriptIII        4.5 μL 
※RT-のmixはSuperScriptIIの代わりに滅菌水を入れる。

プログラム設定が可能なヒートブロックで以下通りにインキュベートする。
25℃, 10 min

50℃, 50 min

85℃, 5 min

4℃, ∞
※プログラム可能なヒートブロックがなくても、2台のヒートブロックがあれば可能。

0.5 μL RNaseHを加える

37℃, 40 minインキュベート

cDNA 20 μLに滅菌水180 μLを加えて10倍に希釈する。この溶液をリアルタイムPCRのcDNAとして用いる。-30℃で保存すれば、何年も使用可能。

リアルタイムPCR
当研究室ではABI社(買収されたので正確にはThermo Fisher社だが、ABIの名前は残っている)のStepOnePlusを用いている。また、リアルタイムPCRの反応には、Fast SYBR Green Master Mixを用いている。
プライマーの設計は、StepOnePlusを購入した際についてきたソフトであるPrimerExpressを用いている。設計後は、100 μM or 50 μMになるように注文している。
StepOnePlusに対応する96穴プレート、フィルムを用意する。

遺伝子ごとにPremixを作る。
※Premix8本分(粘性があるので少し多めに作った方がよい)。
FAST SYBER Green Master Mix 50 μL
Primer Forward                          0.5 μL
Primer Reverse                          0.5 μL
滅菌水(MilliQ水でよい)      29 μL

8 μL Premixを96穴プレートに入れる。

cDNA RT+ or RT-を2  μLずつ入れ、ピペッティングで混ぜる。
シールをして、プレート用の遠心機で1minほど遠心する。

StepOnePlusにセットする。

リアルタイムPCRの反応は各メーカーの説明書参照。

定量結果を解析する。

◯RT-でも増幅が見られたら、DNase処理からやり直しである。
◯Melt curveのピークが1つであることを確認する。ピークが1つでない場合は非特異的な増幅が起こってしまっているので、定量結果が正確ではない可能性がある。その場合は、プライマーを設計し直す。

※プロトコールは必ず他の文献などでもご確認ください。

2017年11月28日火曜日

シアノバクテリアからのRNA抽出

RNAの測定は、転写産物量解析、トランスクリプト解析などと呼ばれる。以下は、キットなどを使わず、Isogenという試薬を使ったRNAの抽出方法である。シアノバクテリアは多糖類のコンタミネーションのためか、きれいなRNAを取ることが難しいことが知られている。

多糖を除くためには、色々な試薬なども売られているが、経験上もっともうまくいった方法は「イソプロパノール沈殿(またはエタノール沈殿)をたくさん行うこと」である。エタノール沈殿だと冷やす時間が必要なので、当研究室ではイソプロパノール沈殿を使っている。

RNAの抽出
細胞(培養液30 mL程度)
を500 μLのTE+0.5% SDSに懸濁。等量の酸性フェノールを加える

65℃で10-15分間インキュベート。2、3分ごとに混ぜる。

遠心15,000 rpm x 5 min, 室温

上清を新しい
マイクロチューブに移す。等量のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(PCI)を加えて混ぜる。

遠心15,000 rpm x 3 min, 
室温
上清を新しいマイクロチューブに移し、等量のPCIを加えて混ぜる。

遠心15,000 rpm x 3 min, 
室温
PCI抽出を3、4回繰り返す。

1/10量の3M酢酸ナトリウムと等量のイソプロパノールを加える

遠心15,000 rpm x 10 min, 4℃

上清をデカントで捨て、70%エタノール 200 μL
を加える

遠心15,000 rpm x 3 min, 4℃

上清を捨てる。ここは乾燥なし。

TE100 
μLに懸濁。1 mL Isogenを加え、よく混ぜる。室温で5分間静置。

200 μL
クロロホルムを加える。よく混ぜる。室温で2、3分間静置。

遠心15,000 rpm x 15 min, 4℃

上清を新しいエッペンに入れ、等量のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールを加え、混ぜる

遠心15,000 rpm x 3 min, 4℃

再度PCI処理(同上)※中間相がきれいになるまで繰り返す。

0.8 volume イソプロパノールを加える。混合。

遠心15,000 rpm x 10 min, 4℃

上清を捨て、1 mL 70%エタノールを加える

遠心15,000 rpm x 3 min, 4℃

上清を捨て、軽く乾燥。滅菌水に懸濁。

DNAの除去
TURBO DNase (Thermo Fisher Scientific)を用いてDNAを完全に除去する。これによって、リアルタイムPCRやマイクロアレイにも利用できるクオリティのRNAを生成することができる。

RNA溶液に1/10量のTURBO DNase Bufferと1 μL TURBO DNaseを加える。
37℃で4〜5時間インキュベート
※プロトコールだとDNaseの反応は20~30分間になっているが、シアノバクテリアの場合は足りない。使用目的によって変える。マイクロアレイなど、多少DNAが残ってもいい場合は30~60分間にする。リアルタイムPCRなど、完全に取り除きたい時には4、5時間インキュベートする。
RNase-free水でメスアップし、PCI処理およびイソプロ沈を行う。
TEまたはRNase-freeの水に懸濁する。
NanoDropなどで定量する。

-30℃ or -80℃で保存。

※プロトコールは必ず他の文献などでもご確認ください。

2017年11月27日月曜日

バイオプラスチックPHBの増産!

"Increased bioplastic production with an RNA polymerase sigma factor SigE during nitrogen starvation in Synechocystis sp. PCC 6803."

Osanai T, Numata K, Oikawa A, Kuwahara A, Iijima H, Doi Y, Tanaka K, Saito K, Hirai MY.

DNA Res. 2013, 20:525-35.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23861321

SigEというRNAポリメラーゼシグマ因子を用いて、単細胞性シアノバクテリアであるシネコシスティスの炭素代謝を大幅に改変することができた。さてさて次はなにか有用な物質を作ろうと考えた。

2010年度より理化学研究所植物科学研究センター(現環境資源科学研究センター)に基礎科学特別研究員として異動した。通称基礎特研。3年間の任期付であるが、日本でもっとも給料のよいポスドクとして知られている。

理化学研究所に異動してすぐはシロイヌナズナの研究を行っていた。しかし、シロイヌナズナは研究の期間が長く、手軽に扱え、光合成・葉緑体のモデルであるシネコシスティスも同時に扱おうと考え、少し経ってからシアノバクテリアも研究し始めた。私は周りからシアノバクテリアをずっと続けてきたと思われているのだが、1年間くらい全く触っていなかったのである。

SigEによる糖異化促進によって、グリコーゲンの分解を促進し、アセチルCoAを増やすことができた。アセチルCoAは、クエン酸回路の手前の代謝産物であることが知られているが、他の有用物質の前駆体ともなっている。

ポリヒドロキシ酪酸(polyhydroxybutyrate)、通称PHBは、アセチルCoAから3段階の反応で合成される。SigEはグリコーゲンからアセチルCoAまでの代謝反応を促進するため、SigEの過剰発現(SigEのタンパク質量を増やすこと)によって、PHBが増えるのではないかと考えた。



実際に詳しく解析してみると、なんとSigEの制御下にPHB合成酵素であるPHBシンターゼが入っていることがわかった。すなわち、SigEはもともとグリコーゲンからPHBまでの代謝経路を包括的に正に制御していたのである。

SigE過剰発現株を窒素欠乏状態にしてPHBを合成させたところ、野生株と比べて2.5倍にPHB量が増加していることが明らかになった。
このように、代謝酵素の改変ではなく、SigEという「転写制御因子」を改変することによってバイオプラスチックであるPHB量を増加させることに成功した。

たった1つの遺伝子を過剰発現することで代謝経路を包括的に制御することができ、かつ、バイオプラスチックとなる代謝産物量を増加させることができる。転写制御因子の代謝工学への利用はここから始まったのである。

2017年11月26日日曜日

2017年度生明祭 no.3

2017年度生明祭の記事no.3である。先生、遊び倒しています。この日のために仕事はいろいろと調整をしてきたので、問題なし。やはり教員として学生が頑張っている姿を見なければいけないという使命感に燃えているのである(←嘘です。遊んでいるだけです💦)。

いろいろと気になった展示はまだまだある。

応用微生物学研究会は農学部の学生が多いサークル。農芸化学科の学生も多い。当環境バイオテクノロジー研究室の学生も所属していたはずである。成績優秀者が多いとのことであるが、真相はいかに。

この研究会では酢酸菌を使ってナタデココを作っていたり、土壌から放線菌を単離しようとしていたり、パンや柑橘類からカビを単離しようとしていた。面白い・・・やってみたい・・・

説明をしていただいたのは、柑橘類やお菓子類からの抗生物質ペニシリンを産生する青カビの単離に挑戦していたものである。1928年にフレミング博士が人類初の抗生物質であるペニシリンを単離したことはいうまでもない。人類を救った発見である。

放っておくと生えてしまう青カビであるが、いざ単離しようとするとなかなか難しいとのことだった。また、ペニシリンを産生する青カビを取ろうとすると、また一段と難しいらしい。フレミング博士の発見はまさに僥倖で、研究とは運も重要なファクターであるのだなと、納得。こういうのに挑戦してるなんて面白いなととても感心しました。。


2日目もたくさん食べる。
こちらは、吹奏楽部のフレンチトースト。幹事長(部長のことだろうか!?)がヒカキンに似ているらしいが残念ながらお会いできず。2年生のSさんにいろいろ解説をしてもらいました。髪の色が変わっていて、一瞬だれかわからなかった・・・。




バドミントン部のワッフルは、メープルシロップ味を選択。追加でホイップクリームも。SNSに良さそうなかわいい見かけ。2つ買って、1つは子供が一人でペロリと全部平らげてしまいました。うちの環境バイオテクノロジー研究室のMさんの所属でした(みんないろいろやっているなあ)。。



うちの家族に人気だったのが沖縄そば!こちらは植物保護研究部。去年一人で2杯食べました。うちの上の子が今年は2杯以上食べてしまった・・・取り合いになって結局4杯くらい買ってしまった。入っている肉もしっかり味が付いていて、絶対に外さない一品である。


こちらはリンガフランカのベビーカステラ。リンガフランカは明治大学公認のインカレフットサルサークル。2年生のUさんとNくんがいたのだけれど、とっさに名前が出なくてごめん・・・秋学期(後期)は2年生の授業がなくて寂しい。元気だから大変なのだけれど💦

選んだのはまたもやメープル味。ベビーカステラはまわりがカリッとしていて、優しい甘さであっという間に10個食べてしまいました。。

剣道部のフランクフルトも濃厚でがっつり美味しかったのだけれど、写真を撮り忘れてしまった・・・。子供連れだと何かと手が離せなくて忙しい。剣道部はうちのFさんも所属。生明祭でみんなの研究室以外の活動を改めて認識する。そうだった剣道部だった。でも完全に頭のキャパを超えている・・・

農学部エリアのノンアルコールのサングリアやコーヒーもすごく美味しかった。研究室単位で出店していて楽しそう・・うち(環境バイオテクノロジー研究室)はいつも企画倒れで実現せずに終わります(笑)。いつかやりたいなあ・・・

今年もお腹いっぱいになり、人気企画酪農研究会のジンギスカンに行きそびれてしまった・・・しかも夜は生田駅近くで小山内研初のOG会を開催(まだ女性しか卒業生がいないため、OG会)。OGは1期生で、久しぶりに会えて本当に嬉しい。教員をやっていて良かったと思う瞬間です・・・

飲み会では大事なことも話すし、もう少し飲み会やらないとダメなのだろうか。飲み会の頻度については考え中。

本当はもう1日遊びたかったけれど・・・また来年の楽しみにしたいと思います。。相変わらず素晴らしい学園祭です!

2017年11月25日土曜日

2017年度生明祭 no.2

明治大学生田キャンパスで開催される2017年度の生明祭。今年は11月24日〜26日の3日間の開催である。

まだまだ紹介するものがいっぱい。
軟式野球部の「パンケッカ」。
上はチリソースで中にチーズ(だと思う・・・)が入っている。スイーツではないが、ほんのり甘く優しい味で、上のチリソースとの対比が美味しい。珍しい料理で、ブラジルのものらしい。調べたら、ブラジルの朝食によく出る料理らしい。こういう新しいものに出会えるもの学祭ならではの楽しみである。

ハイキング部はベビーカステラ。
ハイキング部は登山のサークル(部なのかもしれない?)で、環境バイオテクノロジー研究室にも2人も所属学生がおり、こちらも買わないわけにはいかない。たこやきのようなベビーカステラだった。上には抹茶の粉やチョコレートなどがかかっている。美味しい。。

こちらはアニメ声優研究会のプルコギパン。男性が多い様子で、男性の料理。。甘辛く味付けたプルコギがパンに挟まっていた。しかし、男性の好みをわかっている。こういう味付けって、男性好きなんだよね・・・豪快であるけれど、ツボを押さえているプルコギであった。。


さて、第17回目を迎えた生明祭には名物企画が様々あり、それらも紹介していく。

例えば、天文部は毎回たい焼きとともに、自作のプラネタリウムの上映を行っている。毎回人気でなかなか取れなかったのだけれど、今年は金曜日にチケットが取れたので初めて鑑賞することができた。

30分間の上映で、投影やナレーション、そしてムービー撮影などもすべて自分たちで行っているようであった。多才だなあと関心。すごく快適で星空が綺麗で、ナレーションが落ち着いていて心地よく、あと10分間くらい聞いていたら気持ちよく寝てしまいそうでした(笑)。

オープニングやエンディングも自作でとても面白い。オープニングでは笑いも起きていて、また、エンディングは「これ自分たちで作ったの!?」という出来栄えだった。驚き。

天文部はプラネタリウムの隣で展示も行っていて、撮影した天体のポストカードを作って販売していました。当研究室のKくんもいたので、買わないわけにはいかず。。ポストカードを2枚購入しました。。

食堂館1階では毎年ジャズ喫茶がNewWaveJazzOrchestraというジャズのサークルが毎年開催している。ジャズを聴きながら、喫茶メニュー(コーヒー、紅茶、ココアにケーキなど)を注文することができる名物企画である。確か2年前(昨年だっけ?)は団体賞を取っていたと思う。当環境バイオテクノロジー研究室のメンバーも所属しているので、今年も聴きに行く。とても優雅な空間で、演奏しているとみんなかっこいい。

楽器を演奏していると、大学生なのだけど、すごく大人っぽく見える。自分は楽器を演奏できないので、あんな風に演奏できたら気持ちいいんだろうなと、すごく羨ましく思う。尊敬の眼差しである。大学生でもちろん若く見えるのだけれど(というか実際に若いのだけれど)、演奏していると「ああ、大人だな・・・」と感慨深い。昨年はうちの環境バイオテクノロジー研究室の2人が同時に演奏している時間に参加することができて、とても幸せだった。。

明治大学「茶華道研究部」はなんと70周年とのことである。文系の学生が多いそうだけれど、我らが農学部農芸化学科のUくんも作品を出店していた。芸達者・・・すごいなあ・・・男性で華道ってかっこいい(作品を載せていいかわからなかったので文章だけ。といってもツイートはしてしまったけれど💦)。人気投票もあるので、とりあえず1票を投じてきました。。いや、知り合いだからではなく、とても素晴らしかった。サンゴのような木があってとても芸術的でした。

no. 3に続く。

2017年11月24日金曜日

2017年度生明祭 no.1

明治大学には2つの学園祭がある。1つは明大祭で和泉キャンパスで行われる。有名なリバティタワーがある駿河台ではない。もう1つが我らが生田キャンパスで行われる生明祭である。生田キャンパスの「生」と明治の「明」を組み合わせた言葉である。

例年11月に3日間の日程で開催される。金、土、日曜日の3日間で行われることが多い。明大祭はその他の学部すべてであるのに対して、農学部と理工学部の2つの学園祭なので、相対的に規模は小さいが、明治大学が誇る理系の学園祭である。

初日の11月24日は晴天に恵まれる。肌寒いけれど、気持ちの良い秋晴れor冬晴れであった。昨日は雨だったのだけれど当日は晴れて本当によかった。

生明祭の横断幕や看板も綺麗に作られていた。熊がかわいい。 インスタ映えしそうなので、当然インスタにもアップ。1週間前に始めたインスタグラム大活躍である。



そして明治大学のキャラクターといえば、めいじろうである。


今年のゆるきゃらグランプリでは、ご当地部門で31位だった。お世辞抜きでめいじろうは、かなりかわいいと思う。生明祭にもめいじろうがいて記念写真を撮らせてくれた。
めいじろうが食べ物屋の勧誘に連れて行かれていたのを見かけたのだけれど、結局買わされたのだろうか(笑)。人気者は大変である。

農学部と理工学部のキャンパスなので、理系の展示が多いかというと、はてどうだろう。我々の環境バイオテクノロジー研究室もひっそりとポスターや培養の様子や藻類から取れる色素の展示をしている。明日の25日からは交代で説明の人がいるので(すべての時間ではありません。。)、興味がある人はぜひお越しください。第一校舎2号館の1階です。

通常の学祭と同様に、クラブやサークル、研究室や有志団体による出店がたくさんあった。当然食べ物を提供する店もたくさんある。

学生から声をかけられたら基本的にすべて買うというスタンスで臨む。SNSで宣言したので、多くの学生に声をかけてもらった。人気のジンギスカンは混んでいたので、明日以降にまた再チャレンジの予定。でも明日の方がもっと混むかな・・・

たこ焼きにホットク。ホットクはこの間韓国に行ったばかりで、まさか生明祭にもあるとは思わなかった。。ホットクが大好きなので本当に嬉しい。たこ焼きも寒かったのでとても美味しかった。

たこ焼きは応用微生物学研究会という実験をするサークルである。農学部の学生が多いそうである。もともと実習が大変なのに、さらに実験をするとは💦おそるべし、農学部生。

たい焼きや天文部が提供。当研究室(環境バイオテクノロジー研究室)には天文部が2人もいるので、これは買わないわけにはいかない。ちなみにオーソドックスな餡子が好きです。

こちらはおしるこ。確か、楽農4Hクラブの提供(間違っていたらすみません・・・)。このクラブは自前で農作物を育てているクラブとのことである。自前の米で中の餅がとても美味しいおしるこでした。。

楽農4Hクラブには、中央校舎で活動の説明もしてもらいました。自前の畑で農作物を作るだけでなく、農家に出向いて地元の方と交流しつつ、農業体験をしていろいろと学んでいるとのこと。本当に丁寧に説明してくれて、ボランティアの話も聞けて感動。なんか大学生ってキラキラしていて眩しい。汚れた大人ですみませんと謝りたいです(笑)。。

豚丼にミネストローネも食べる。。お菓子が続いたのでちゃんとした食事で嬉しい。さすがにだいぶお腹いっぱいになってきた。。でもこの後もたくさん食べる。

ゴルフ部のフライドポテトはらせん状になっている。えっと、らせん状のポテトの呼び名はなんだっけ・・・忘れてしまったけれど、上のようなInstagram用の写真も撮りました。。学祭っぽい。。

こちらは食品化学研究会のフライドポテト。食品化学研究会は、主に農芸化学科のサークル。生田キャンパスには農学部と理工学部があり、農学部には4つの学科があるが、このように学科単位のサークルもあるらしい。着任して初めて知りました。農芸化学科の教員なので買わないわけにはいきません。。このポテトで、確かフライドポテトは5個目くらいだった気がします(笑)。でも脂っこくなくて、美味しかったです。。

もっと食べて、食べ物以外もいろいろ廻ったのだけれど、紹介しきれない・・・

ということでno. 2に続く。


当番制のお仕事

環境バイオテクノロジー研究室(小山内研)は比較的自由だけれど、当然決まりごともある。

研究室で当番制になっているものをいくつか挙げてみる。

1. 掃除当番
微生物の実験を行う上で、部屋の清潔さはとても大事である。コンタミネーションの頻度も違ってくる。こういう部分をおろそかにすると、実験の進捗にも影響が出る。洗い物や掃除の仕方によって、将来の研究成果が見えてくると言われている。どれくらいの気持ちで研究に望んでいるかを反映すると言われている。

掃除当番の仕事としては、掃除機やほうき、雑巾で部屋を掃除することになっている。順番に2人一組のペアになっており、新しいメンバーでもわかるように、先輩と組んで進める形になっている。


2. 廃液当番
実験をしていると、流しに流すことのできない廃液がたくさん出てくる。有機溶媒や酸の廃液が多い。RNA抽出などでは有機溶媒を用いるし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)では非常に薄いものであるが酸と色素の廃液が出てくる。これらの廃液をポリタンクに集めて生田キャンパスの安全管理センターに持っていくことが必要となる。廃液を集めるための空のポリタンクは安全管理センターからもらえる。こちらも2人組のペアになっている。

大事な点は、上記は学生からの提案で決まったことである。実験を進めるならば掃除も廃液処理も必要なことは当然である。マイクロピペットを握って好きな実験だけすれば良いわけではない。

実験スペースや機器の予約、試薬の補充なども、周辺の作業もすべて含めてこなすことができて、初めて実験をしていると言える。

ということで、これらのシステムを自分たちで考えて、研究室がうまく動くように考えてもらっている。

3月〜5月が基礎実習、5月〜6、7月が専門実習と呼んでいるが、それ以降の8月〜10月をマネジメント実習と名付けている(名付けだのだけれど、あまり研究室ではこの名前を使っていない💦)。

特定の実験作業だけならば、練習すればできるようになる。しかし、実際には他の人も実験していれば試薬が無くなったり、機器の予約や培養のスペースが重なったりする。そういうのをコミュニケートすることで、調整してうまく自分の実験が組めるようにしなければならない。技術がついてきたら、そういうマネジメントも含めてできる人になってほしいということである。

それを組んで、掃除や廃液当番も作ってくれたけれど、また人数が変われば最適な形も変わってくると思う。特定の実験作業ができるよりも、場所や人に合わせて最適なシステムを組める人になってほしいというのが環境バイオテクノロジー研究室の方針でもある。

2017年11月23日木曜日

コハク酸がプラスチック!?

コハク酸と言えば、生物を選択した高校生は知っているかもしれない。クエン酸回路はほとんどすべての生物が有する大事な代謝回路であり、クレブス回路、TCA回路とも呼ばれている。受験勉強ともなればクエン酸回路は覚えるのかもしれない(生物を選択していなかったので、不明)。

また、中学・高校の実験でコハク酸を熱して溶かしてから徐々に冷やしていき、コハク酸の結晶を作ったことがあるかもしれない。

そんなコハク酸だが、実は汎用的な工業原料であり、ポリブチレンサクシネートというプラスチックの原料となることはあまり知られていない。コハク酸はもともと石油から無水マレイン酸を経て合成されきたが、バイオでのコハク酸の発酵による生産に置き換わってきており、熾烈な争いとなっている。バイオアンバー社、ミリアント社、DSM社、BASF社などでのバイオコハク酸の生産は、年間数万トンを越え、現在も増加している。

現在のバイオコハク酸生産は、酵母や大腸菌などの従属栄養生物を用いて行われている。これらの従属栄養生物に糖を炭素源として与えて、発酵によってコハク酸を生産している。

しかし、原料としての糖は値段が高い。そこで我々は、シアノバクテリアなどの微細藻類を使って大気中の二酸化炭素からコハク酸を生産しようと考えた。

シアノバクテリアのコハク酸生産はほとんど研究されておらず、唯一アメリカのグループが嫌気条件でコハク酸を細胞外に放出することを明らかにしていたが、その量はほとんど痕跡量であり、水素生産などのついでに調べていただけであった。

我々の研究室は、単細胞性シアノバクテリアであるシネコシスティスを嫌気発酵条件にすることで、細胞外に二酸化炭素を由来とするコハク酸を放出することを発見した。
https://www.meiji.ac.jp/koho/press/2015/6t5h7p00000jc80a.html

まだまだ産業となっているバイオコハク酸よりも生産効率が低いので生産コストははるかに高い。しかし、産業界からもいずれは二酸化炭素から化成品を製造したいというニーズがある。今後もどんどん研究を発展させ、二酸化炭素からのコハク酸生産技術を明治大学から発信していきたいと考えている。

2017年11月22日水曜日

SigEを用いた遺伝子工学による糖異化促進

"Genetic engineering of group 2 sigma factor SigE widely activates expressions of sugar catabolic genes in Synechocystis species PCC 6803."

Osanai T, Oikawa A, Azuma M, Tanaka K, Saito K, Hirai MY, Ikeuchi M.

J. Biol. Chem. 2011, 286:30962-71.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21757761

学位を取得後、東大総合文化研究科の池内先生の研究室に日本学術振興会特別研究員(PD)として移った。ポスドク生活のスタートである。

はじめの1年間はあまりうまくいかず。3つ、4つのテーマを試したが、ぱっとせず。さらっと書いているが、大変なことである💦。

当時の研究室に遺伝子の過剰発現用のベクターがあった。しかし、もっぱら酵素の精製用に使われており、遺伝子工学として細胞や代謝の改変には使われていなかった。

そこでこのベクターを用いて、細胞の改変、特に代謝工学を行おうと考えた。すでに糖異化のグローバルレギュレーターであるSigEを同定していたので、このSigEを過剰発現すれば代謝が大きく変化すると考えた。特にグリコーゲンという炭素の塊の分解を促進する因子なので、炭素の流れを変えて色々な物質の生産に利用できるのではないかと考えた。

このコンセプトは、今に至るまで続いているのだが、当時の反応は至って冷ややか。代謝工学が流行る前だったので日本のシアノバクテリアの分子生物学の研究者からはあまり良い反応を得られなかった。唯一、味の素(株)の研究者が発表を聞いて、これは何か発展するのではないかと期待をもって声をかけてくれたことを今でも覚えている。

ところが、論文はJ. Biol. Chem.という生化学伝統の雑誌に、割とあっさりと通った。そして、ちょうどこのころ代謝工学ブームがやってくる。アメリカの研究者の先見性と懐の深さには本当に頭が下がる。

そして、この論文より強力な味方である山形大学及川先生とコラボすることができた。及川さんには現在に至るまでずっとお世話になっている。この論文でキャピラリー電気泳動マススペクトロメトリーによるメタボローム(CE-MS)解析を行って頂いた。この解析の結果、SigEを過剰発現することで、アセチルCoAやクエン酸などの糖異化下流の代謝産物が増加することが明らかになった。



このSigE過剰発現株は、今に至るまで非常に重要な代謝工学の基礎となる大事なものである。そして、理化学研究所に移籍して、すばらしい共同研究者に恵まれ、研究が加速していくことになる。

2017年11月21日火曜日

第8回アジア・オセアニア光生物学会議(AOCP2017)no.5

韓国ソウルで開催された第8回アジア・オセアニア光生物学会議(AOCP2017)。ここまでだと遊んでいるみたいだけれど、もちろん研究会議に参加した。

最初はPlenary Lectureでオーストラリアの教授。Plenary Lectureとは基調講演と訳され、特別に偉い方が講演をする。発表時間は、質問を合わせて1時間。皮膚ガンの話。光生物学の会議で、もちろん紫外線と皮膚ガンは関係が深いので医学系の話を聞くことになる。
会場はシャンデリアがあってとても綺麗。なんとこのシャンデリアはスライドを使うときには天井近くまで動いていた。驚き。スクリーンも大きいし、会場の椅子も座りやすくてとても快適な会場だった。思ったほど人が多くなく、全体で200人くらいの会議だったので、こじんまりとした国際会議だった。

光合成のセッションの後は、自分のセッションであるBiomass & Metabolism。5人の招待講演者でトップバッター。他の4人は韓国の先生方でした。

招待講演の発表で持ち時間は30分間。特に発表と質疑応答の時間は区切られていなかったので、だいたい25分間くらい話して、5分間くらい質問かなと思い、そのように設定する。
発表者からスクリーンも見やすく、マイクも使いやすかったため、発表はとてもやりやすかった。たまに発表者の場所がスクリーンの横すぎて、発表しているスライドが見えないことがあって困ることがあるので、とても良い会場でした。

質問では、スケールアップをどうやっていくのか?やスケールアップしたときに水はどのように供給するのかなどがあった。まさに今現在悩んでいるところである。基礎から応用への橋渡しは「死の谷(Death Valley)」と呼ばれている。そこに差し掛かった研究者は、成果が上がらないということである。これは世界中の研究者の悩みである。

また、韓国のシアノバクテリアの新進気鋭のPIの発表も聞いた。流暢な英語と素晴らしい研究成果。英語ができないともじもじしているなんて、決して許されないのが今の時代である。英語の発表がうまくない人こそ、国際会議などでどんどん発表してチャレンジするのがいいと思っている。

発表後はポスターセッション。そして、夜はChungnam National UniversityのYoun-il Park教授とご飯を食べに。Park教授の研究室には、3年前に全部で1ヶ月ほどVisiting Scientistとして滞在した。いわば私の先生でもある。シアノバクテリアや植物の光受容体で有名で、とても優秀な方である。性格も素晴らしい方である。

夜は典型的な韓国料理で、カルビやキムチのスープ、黒胡麻のスープに刺身などなど盛りだくさん。韓国料理は本当に品数が多い。いろいろな種類の物を食べ、特に野菜をたくさん食べるので本当に元気がでる。最後はヌルンジという米をお湯に溶いた料理も。これはビビンバなどでお釜にくっついた米を洗うのが大変なので、お釜にお湯を入れて残りのご飯を食べるところから始まったらしい。特にお湯に味はない。

韓国料理は、唐辛子をふんだんに使うため、全般的にとても辛い。しかし、すき焼きのように甘い料理もあったり、最後のヌルンジのように優しいものもたくさんある。この味のメリハリもとても面白いのである。

研究の話をしているはずが、いつの間にか料理の話になってしまったが、Park教授とも久しぶりにたっぷり話して、とても有意義な夜でした。全部の期間参加できなかったけれど、招待講演もさせてもらい、素晴らしい経験をした会議でした。

2017年11月20日月曜日

第8回アジア・オセアニア光生物学会議(AOCP2017)no.4

第8回アジア・オセアニア光生物学会議(AOCP2017)は韓国で開催された。開催場所は江南(カンナム)地区。ここは北側の明洞などと異なり、観光地ではなくオフィス街である。

会場となったのは、インペリアルパレスホテルという古き良きホテルである。最寄りの地下鉄の駅からおよそ徒歩5分の距離だった。アクセスがとても良い。
http://www.imperialpalace.co.kr/jpn/sub/about/ip_overview.asp

リンクの外観を見るととても綺麗であることがわかる。
自分で撮った写真はこんな感じ。
当日は天気も良く、とても大きなホテルで素敵な外観を撮影することができた。

入り口にはボーイさんが立っており、回転ドア式のエントランスを入ると、いきなりこんな風景が。豪華ですっかり冬仕様!
少し早いけれど、クリスマスっぽくなってきている。クリスマスって、なんで世界中で流行っているのだろう。。


入り口からフロントまでの通路もこんな感じ。電飾を施した木々が両サイドにあって、通路を作っていた。とても華やかな作りになっている。

フロントでは、日本語通じるかなと思ったけれど、韓国語か英語だった。韓国語はしゃべれないので、英語で会話。

部屋も綺麗だったが、WiFiがいまいち。各部屋のWiFiが繋がらず、ホテル全体のWiFiが繋がったので問題はなかったのだけれど。口コミを見ると賛否両論だった。確かに綺麗だけれど、やや古さは目立ったかもしれない。でも快適に過ごせた。

学会というと大学で行うイメージを持っている人も多いかもしれないけれど、このようなホテルで行うことも多い。隣の建物にカンファレンスホールがあり、200人くらいが入れる部屋が2つほどあった。部屋の前にはポスターセッションを行う会場があり、コーヒーや紅茶、クッキーが用意されていた。初参加だったので全然知らなかったのだけれど、快適な場所で行われる学会である。

国際学会の参加費は高いことが多い。学生やポスドクで300ドル、それ以外の人は500ドルである。つまり、私の参加費は5万円以上となる!ただし、招待講演だったので、参加費は無料だった。

ただ、正確に言うと、一度クレジットカードで振り込み、受付で現金で返却されるというよくわからないシステムであった。受付で500ドルをもらうはずだったのだけれどうまく話が通っておらず、話してやっともらえることになった。この辺は遠慮をしていては駄目なのである。渡された500ドルだけれど、外貨の両替で手数料などをだいぶ差し引かれるはずである(はずではなく、実際にだいぶ損をしたようである・・・)。これは自腹だよな・・・と思いながら、まあ仕方ないので諦める(笑)。


ホテルのエレベーターはこんな感じであった。クラシックな作りである。なんか東京ディズニーランドホテルに近かった。部屋はカードキー式で結構綺麗。ただし、水回りはやっぱり古そうだった。。

朝食は、どちらかと言えば洋風でスクランブルエッグやソーセージ、パンケーキ、スモークサーモン、チーズなどがあった。ただし、いろいろな国の人を想定しているのか、味噌汁やなんと納豆まであったのには驚いた。もちろんキムチなどもあった。昼夜に韓国料理を食べていたので、ちょうど良くてとても美味しい朝食だった。温かい豆乳もあって、これは優しい味でとてもよかった。

さて、ここまでだと遊んでいるだけみたいだけれど、もちろん国際会議に参加して、研究の議論もしています。

no. 5に続く

2017年11月19日日曜日

第8回アジア・オセアニア光生物学会議(AOCP2017)no.3

第8回アジア・オセアニア光生物学会議(AOCP2017)が、韓国・ソウルで開催された。開催場所は江南地区であるけれど、初日に北側のソウル特別区(ソウル駅などがある)に出かけた。ここで一番有名な場所の1つが明洞(ミョンドン)である。

ソウル一番の繁華街である明洞であるけれど、食べ歩き以外には何が目につくかというと、化粧品のお店が一番目に付いた。飲食店を除くと、化粧品の店が最も多いのではないかと思う。明洞は原宿に例えられることが多いようだけれど、やはりファッションの街である印象を受けた。

明洞は日本人観光客が多く、いたるところから日本語が聞こえる。観光客だけでなく、屋台でものを売っている人、化粧品などのチラシを配っている人はセールスに必要な日本語はできるようである。「ラッスンゴレライ!」など、若干のタイムラグを感じるネタで話しかけられたりもした(笑)。

日本と同じで、ファッションの街には雑貨屋もたくさんあった。日本でいうとLoFTやダイソー的なお店がたくさんあると思ってもらえればいいと思う。日本のものもそのままたくさん売っていた。外国のものがおしゃれに見えるのはどこの国でもかわらないところだろう。また、かわいい系のゆるキャラが多いのも感じた。全体的に日本人と感覚が近いのだろうと感じる。かわいい系のキャラクターが人気を博しているいるようであった。

早めの夕食はそのまま明洞で。サムギョプサル(豚の焼肉、上の方の厚い肉)にハラミ(下の方の赤い肉)を注文。
鉄板が斜めになっていて、下の方に脂が流れていくシステムになっている。また、右の方にはキムチがある。つまり鉄板でキムチを焼くという日本にはない食べ方になっている。
また、焼肉にサンチュ(肉を巻く野菜)が欠かせないのがこちらの特徴である。日本でももちろん頼んだりするだろうけれど、焼肉で必須ではなく、肉をそのまま食べることも多い。こちらの人はほとんど野菜に巻いて食べる印象がある。肉と葉っぱだけでなく、図のごま油、チリソース、味噌、ニンニクにキムチやネギ、玉ねぎなど、様々具を乗せて一度に食べるので、いろいろな味が試すことができてとても面白い。

韓国料理はサイドディッシュが豊富なのが特徴的でいろいろな味が試せるし、野菜をいっぱい食べる。サイドディッシュはウリのてんぷら、白菜ではない青菜のキムチなど様々である。また、ニンニク、ネギ、しそ、唐辛子など香草や香辛料をたくさん食べる。体があったまるし、とても元気になる。ただし、日本料理と同じく、塩分が高いのが難点である。

野菜に巻いて肉を食べ、サイドディッシュもたくさん食べるとすぐにお腹いっぱいになる。ご飯の頼んだけれど、ご飯を食べる隙間がなくなるので、糖質は結構低い食事になるかもしれない。サイドディッシュはおかわり可能で、しかもただというのも韓国の特徴。毎回韓国の人たちに「採算は合うのか?」と聞くのだけれど、笑って「問題ない」と言われる。日本ではキムチはもちろんただではないので、不思議なところである。

辛いものが苦手だと大変かもしれないけれど、さすがに明洞は観光客に配慮されているらしく、それほど辛いものがなかった。韓国初心者には最適な場所かもしれない。

no.4に続く。

2017年11月18日土曜日

第8回アジア・オセアニア光生物学会議(AOCP2017)no.2

第8回アジア・オセアニア光生物学会議(AOCP2017)に、11月12日〜11月14日の日程で参加した。本当は11月15日まで会議はあるのだが、残念ながら全部は参加できなかった。
http://www.aocp2017.org/html/

開催場所は韓国ソウル。言わずと知れた韓国の首都である。金浦空港から電車で1時間足らず。とてもアクセスが良い。ソウルメトロという地下鉄に乗って会場のある江南(カンナム)地区へ。江南と言えば、江南スタイルという不思議な踊りで世界的な大ヒットを記録した韓国人歌手PSYが有名である。ところが、全くその影を見ることはなかった。街中では韓流スター・アイドルの広告がいっぱいあったが、PSYを推している印象は受けなかった。いや、おっちゃんなので、広告を見ても気づかなかっただけかもしれない💧。

ソウルの地下鉄には非常用設備がいっぱいあった。

非常用の水やガスマスクなどが備え付けられているらしい。この辺はやはり北方に位置するため、有事に備えているとのことである。

とはいえ、とりあえず平和そのもの。韓国は治安がいいのでとても安心して行ける。電車でも平気で寝ている人がいる。前回韓国に行った時は、女子高生が膝の上に財布を乗せて音楽を聞いていた。それを見て、平和な国なんだなと感じたことを覚えている。

今の電車の様子は、日本と全く同じ。みなスマホにかじりついている。ゲームやムービー、SNSなどをしているのだと思う。ちらっと見えた感じでは、まったく同じようだった。だんだん外国にいることを忘れそうになってしまう。

メトロの乗り方は似ているが、日本のようにぺらぺらの切符がない。一回乗るだけでもプラスチックのカードになっている。プラスチックのカードを行き先分の料金を払って購入して改札にタッチしてプラットフォームへ進む。また、出る時も同じくカードをタッチするが、カードは回収されない。改札の外にある返却boxにカードを入れると、500ウォンの保証金が戻ってくるという仕組みである。1回だけ乗るのを繰り返すと、毎回カードの返却をするのが少し面倒ではあるけれど、捨てるわけではないのでエコなのかもしれない。

到着日は時間があったので、一番の繁華街である明洞(ミョンドン)に行った。ここはソウル特別区にあるもっとも賑わっている地区である。東京の原宿を連想するとわかりわ水かもしれない。
https://www.konest.com/contents/area_detail.html?id=1

メインストリートには屋台がたくさんあって、いろいろな物を食べ歩くことができる。

1つ目は、カステラのようなものに目玉焼きが入ったスイーツである。カステラ部分は甘いのだけれど、目玉焼きに到達すると甘さがなくなり、またカステラ部分で甘くなるというとても面白くて美味しいお菓子だった。日本より寒かったので(11月半ばの午後で気温は一桁台だった)、暖かくてとてもよかった。


2つ目はトッポギ(白)とチーズ(茶色)を焼いた串である。トッポギは有名な韓国の食べ物で、いわゆる朝鮮半島の餅である。赤い甘辛ダレに入っているのが一番有名かもしれない。こちらは焼いただけなのでトッポギはほんのり甘いだけで、間にチーズが入っていた。軽食としてとても美味しい物だった。


そして3つ目はホットクである。これを外すわけには行かない。いわゆる「おやき」のようなもので、中にいろいろな具が入っている。写真は餡子が中に入っているもっともオーソドックスなホットクである。周りにくるみなどがついていることが多い。他にもコーンシロップとシナモンだったり、甘くない野菜や肉などのホットクもある。韓国の冬の代表的なお菓子である。観光客向けには1年中あるのだけれど、本来は冬のお菓子であるらしい。屋台で買って食べるのが一般的とのことである。

お焼きと違って、「揚げ焼き」をしているので、少しこってりしているのが特徴である。そこに餡子が重なるので、見た目は小さいけれど、がつんとした甘さでお腹にたまる。もっといろいろ食べようとしたけれど、ホットクでお腹がいっぱいだった・・・韓国スイーツは日本人の口に合うので、おすすめである!

no. 3に続く。

2017年11月17日金曜日

第8回アジア・オセアニア光生物学会議(AOCP2017)no.1

第8回アジア・オセアニア光生物学会議(8th Asia and Oceania Conference on Photobiology, AOCP2017)が11月13日~15日に韓国のソウルで行われた。
http://www.aocp2017.org/html/

実は初参加だったので、光生物会議がどんな学会かあまり知らなかったのだが、セッションのタイトルを見ると

1. Photoaging 光による老化
2. Photosynthesis: the Light Reactions 光合成の明反応
3. Photomedicine (訳がない・・・よくわからない・・)
4. Biomass and Metabolism バイオマスと代謝
5. Photoprotection 光防御
6. Plant Light Signaling 植物の光シグナル伝達
7. Photoreceptors in Animals 動物の光感知
8. Photoreceptors in Microbes 微生物の光感知
9. Bio-imaging technology バイオイメージング技術
10. Optogenetics 光遺伝学(光で遺伝子やタンパク質を制御する技術)

となっている。

つまり光に関係する生物学を幅広く内包している学会であることがわかる。今回は招待して頂いたので、この会議に初めて参加して口頭発表を行うことになった。

韓国出張の良いところは、羽田空港からの便もある点である。成田空港に行くのに比べ、片道1時間くらい節約できる。また、到着するところも金浦空港という空港で、こちらも国内線用の空港であり(国際線は仁川国際空港)、市内へのアクセスがこちらでも短縮できる。予約が埋まりやすいので早めに飛行機の予約を抑える必要があるが、予約ができてしまえばとても便利である。フライト時間も2時間〜2時間半ととても短い。

この会議に参加するため、久しぶりに羽田空港の国際線ターミナルにやってきた(3年ぶりくらい)。

羽田空港はどんどん綺麗になっている。
朝早かったので店の中では食べなかったけれど、和風の作りの店が並んでいて、とてもきれいである。すき焼き、ラーメン、うどん、和定食に、和カフェなどなどとても充実している。

端っこの方に、昔の日本橋を再現した橋が出来ていた・・・3年前はあったかな?最近できたのだろうか。本当にどんどんおしゃれになっている羽田空港国際線ターミナルであると感心した。

また、展望デッキからの景色もとても綺麗だった。朝の7時時くらいで朝日を浴びた建物は輝いていて、空気も気持ちよかった。寒いけれど。
朝日が登って、飛行機を照らしているのもとても綺麗だった。周りには飛行機好きの人たちが写真を取っていた。

韓国へのフライトは国際線なので、機内のエンタメが充実しているのも嬉しい。国際線だと音楽くらいしかないので💦映画やミュージックビデオ、ゲームなどができる。時間が短いのでむしろ長編映画は見られなかったが「打ち上げ花火、下から見るか横から見るか」を見てみる。なんか評価を見ると酷評の嵐だったけれど、そんなに悪いかなという気はした。凄い事件がおこるわけではないし、「君の名は」とスケールを比べてしまうとのんびりした物語かもしれない。でも、飛行機の中では十分に楽しめました。

また、ANAの機内では機内食とドリンクのサービス。国際線の機内といえばワインやビールなどお酒も飲めることになっているが、最近日本酒が頼めるようになったらしい。しかし、韓国でたくさん飲もうと考えていたため、ここはあえて我慢をした。ご飯はすき焼き丼的なものだった。機内食はあまり好きではないのだけれど、これは結構美味しかった。

あっという間の2時間半のフライトで、とても近い。外国にきた感じがあまりしない。入国審査の場所も近いし、速いしとても便利な韓国である。

no.2に続く。

2017年11月16日木曜日

クロロフィル合成酵素の新たな働きを発見

"ChlH, the H subunit of the Mg-chelatase, is an anti-sigma factor for SigE in Synechocystis sp. PCC 6803."

Osanai T, Imashimizu M, Seki A, Sato S, Tabata S, Imamura S, Asayama M, Ikeuchi M, Tanaka K.

Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2009, 106:6860-5.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19342483

大学院生からポスドクにかけて、一つの集大成としての仕事である。一つの論文に注いだエネルギーとしては尋常なものではない。

また、なんといっても共著者のおかげである。酵母ツーハイブリッド解析では佐藤修正先生、田畑哲之先生、そして同期の今清水くんのおかげである。今清水くんは、当時シアノバクテリアのRNAポリメラーゼを精製しており、世界で一番この酵素の精製ができる人だった。過去形にしたが、今をもってしても、彼のクオリティで精製できる人は世界にはいないのかもしれない。研究内容のみならず、色々なことを考えた論文である。

先行研究で、SigEというRNAポリメラーゼシグマ因子が糖異化関連遺伝子の発現を正に制御することを発見した。糖異化とは、多糖であるグリコーゲンを分解していくことである。グリコーゲンの分解がどんな時に必要かというと、光合成ができない条件であり、一番分かりやすいのは、暗条件、夜である。暗条件にすると、糖異化関連遺伝子の発現が一過的に増加する。しかし、これらの制御因子であるSigEの量は増加しない。このことから、SigEの活性を翻訳後レベルで制御する可能性が示唆された。

この論文では、SigE結合タンパク質として、ChlHを同定した。ChlHはマグネシウムキラターゼのサブユニットの1つである。このタンパク質は、クロロフィル合成経路の酵素の1つである。

In vitroでの結合試験の結果、SigEとChlHがマグネシウム依存的に相互作用することを明らかにした。また、In vitroでの転写再構成実験によって、ChlHがSigEの転写活性を負に抑制することを発見した。

シグマ因子の活性を負に制御する因子をアンチシグマ因子と呼ぶ。この論文では、シネコシスティス細胞内において、ChlHがSigEのアンチシグマ因子として働くことを示した。このように、代謝酵素のサブユニットがアンチシグマ因子として働く例はこれが初めてであった。

マグネシウムによる結合の意義は明らかではないが、おそらく光シグナルを反映していると考えている。このように、クロロフィル合成酵素はクロロフィルの合成に働くだけでなく、転写制御にも機能することを明らかにした論文である。






2017年11月15日水曜日

自分の評価と他人の評価

大事な話題を一つ。

30代も終わりに近づき、Ph.Dを取って10年が経過した。すなわち10年間働いたということになる。長いような短いような。

大学院生の時から数えると、15年以上研究をしてきたことになる。この間ずっと感じていることがある。

それは「自分の評価と他人の評価の隔たり」である。

当たり前なのだけれど、自分の評価はいつの間にか甘くなってしまう。甘くなっているつもりはないのだけれど、”他人から見る”と甘くなっているのだろう。

研究室でもしばしば学生やスタッフに言っているのだけれど、研究室に所属して論文投稿や学会発表で大事なことは、「本当の他人の評価を体験すること」であると思っている。

レポートだったら大学の教員なのでどんなものでも目を通す。学生が研究を頑張っていたら、たとえ成果があまりでていなくても努力は認める。しかし、外向けに発表した時にはそうはいかない。少しでも論文が読みにくかったら読むのを止めるだけだし、相手が興味がなかったら、こちらがどんなに全身全霊をかけた研究発表でも聞き流されて終わりである。そもそも発表の機会すら与えてもらえないことも多い。

仕事をしていくと目に付くけれど、こんなに頑張っているのになぜこんなに待遇(給料、職位、福利厚生、権限など)が思い通りにならないだろうと、多くの人が思っている。その原因の1つが自分の評価と他人の評価の隔たりであると思っている。

研究室の学生やスタッフには、「仕事をしていて、月給100万円くらいの働きをしている!」と自分で思っていたら、「だいたい3分の1の月給30万円くらいだ」と言っている(数値には特に根拠はないけれど)。だから、月給100万円欲しかったら、自分では月給300万円もらっても良い働きをしなければならないと思っている(300万円分の働きとは、売り上げが300万円ではないことは言うまでもない)。

当研究室では積極的に論文投稿を推奨しているのだけれど、その理由の1つが、論文を初めて投稿すると味わうのが他人の評価との隔たりであり、これを経験できるからである。「この研究は面白い!」、「もうこれだけ実験をやったんだし、すぐにアクセプトでしょう!?」と思っているのに、論文を投稿するとあっさりリジェクトになってしまったり、リバイスでたくさんの追加実験を要求されたりする。ものすごい辛いリバイス実験をして、それでもトップジャーナルではない雑誌にやっと掲載される。びっくりするほど他人が評価してくれないことに気づくのである。

今現在も、大学専任講師として研究しているが、自分の評価と他人の評価には隔たりがある。自分では「もう十分でしょう!?」と思っているのであるが、他人はそう簡単には認めてくれない。学生の話ではなく、社会人一般の話だと思っている。自分の待遇を嘆いている社会人が無数にいるのはご存知の通りだろう。ずっとこの隔たりと戦っていかなければならないと考えている。

しかし、こういう時に腐ってしまうか、常に考えて改善をして、何度もチャレンジできるかで人生が決まってくると思う。周りの人をみるとみんなサクサクうまくいっているように見えてしまうのだけれど、実際はそんなことはない。うちの研究室もどんどん論文が出ているが、どの論文もとても苦しく、ギリギリのところで通っている。もちろん、落ちたものは世の中にはでないので、周りの人が知ることはない。

このように、研究室で体験してほしいことの1つは「本当の他人の評価を受けること」であり、それがいかに厳しいかを味わってもらうことである。辛い思いをしなさいというわけではなく、厳しい評価を一度受けると二度目は少し慣れてきて冷静な判断ができるようになる。そして、冷静に改善ができるようになる。世の中を呪って愚痴を言っても何も生まれないことに気づくのである。

何歳になっても自分の評価と他人の評価の隔たりはなくならない。毎回そう思う。しかし、自分が100%の力を出しても評価をされなかったら、もう成長するしかない。そのような状況に追い込まれてこそ、初めて成長すると思っている。辛いことなのだけれど、次第に慣れてくるので、頑張って挑戦を続けてほしいと考えているし、自分も挑戦し続けなければいけないと考えている。

学生の研究テーマについて

研究室訪問において、よくある質問の1つが「研究テーマ」である。研究テーマが最重要項目の1つであることは言うまでもない(ただし、テーマが全てではない。テーマを悩みすぎることはよくないので、チャレンジしてみるのも大事)。

環境バイオテクノロジー研究室という名前の通り、環境とバイオをキーワードに基礎および応用研究を行なっている。特に微細藻類を研究材料としている。微細藻類では、シアノバクテリア(ラン藻)、ユーグレナ、紅藻を研究対象としている。

もっとも基礎的な研究としては、
1. 代謝酵素の生化学
2. 転写制御機構の分子生物学
3. 光合成の遺伝学
4, 代謝のシグナル伝達の分子生物学
が挙げられる。

少し応用的な研究としては、 
1. バイオプラスチック原料(コハク酸、乳酸、ポリヒドロキシ酪酸)の増産
2. 水素生産
3. 食用色素の生産
4. 微細藻類の効率的な培養法の開発
を行なっている。
4番は、基礎とも関わってくるので必ずしも基礎、応用とはっきり分かれているわけではない。

ただし、上記はあくまでも例なので、他にも色々な研究を行なっている。新しく配属された学生(3年生)がどのようにテーマを決めていくかというと、3、4月に基礎実習を行なって研究室に馴染む。その間に先輩たちのゼミもあるので、少しずつ研究室で何をやっているかがわかってくることだと思う。

例年は、5月の中旬から下旬に3年生で集まり、「仮テーマ」を決定する。研究室にある全ての実験操作を覚えても全部使うわけではないし、忘れてしまう。ある程度テーマを絞って、自分に必要な実験手法を学ぶのである。環境バイオテクノロジー研究室では、これを専門実習と名付けている。

これでまずは一つのテーマに沿って研究を進めていく。しかし、研究はうまくいかないことの方がよほど多い。一旦決めたテーマを日々修正していき、場合によってはテーマそのものを変えることもある。1つのテーマを進めているといつの間にか別のテーマになっていたということもある。これは別に驚くことではなく普通のことである。

ということで、早い人では、6月くらいから一人で研究を進めることになる。もちろん先輩たちに手法を習ったり、他のメンバーとディスカッションしながら研究の方向性を日々考えていく。

環境バイオテクノロジー研究では、関連はするけれど、一人一テーマで進めてもらっている。遅くとも3年生の夏からは独立のテーマを始めることになる。誰かの手伝いのようなことはしない。

このように、研究テーマは割と早めに決定するが、常に修正しながら研究が進んでいくと考えて欲しい。

また、研究室のテーマ選びでは、先輩も重要かもしれない。人間なので相性もあるので、「絶対にこのテーマが良い!」というのが決まっていなければ、相性が良さそうな先輩のグループのテーマを選ぶというもの1つの手だと思う。

迷いどころではあるけれど、悩みすぎずにやってみると楽しいこともたくさんあるので、良く考えつつも慎重過ぎずに蹴ってして欲しいと考えている。

2017年11月14日火曜日

次世代エネルギー「水素」

水素は次世代のエネルギー源として注目を浴びている。「水素社会の到来か?」といったフレーズがメディアを賑わすなど、化石燃料に変わるエネルギー源として期待されている。

水の電気分解で水素と酸素が発生するというのは理科の実験でも行ったかもしれない。水素の利用は、まさにこの逆の反応である。すなわち、水素と酸素から水ができる際に電気エネルギーが得られるのである。これが燃料電池の簡単な原理である。

2017年には家庭用燃料電池「エネファーム」の出荷台数20万台を突破したのとのことで、現在も水素の利用は広がっている。経済産業省の資料によれば、家庭用燃料電池を2020年に140万台、2030年に530万台に普及させようとしている。

このほかにも燃料電池自動車を2020年までに4万台、2025年までに20万台、そして水素ステーションを2020年までに160箇所、2025年までに320箇所に普及させようというロードマップが描かれている。

ところが、様々な課題も残されている。現在水素と酸素が反応して、エネルギーと水ができると言われれば非常にクリーンに聞こえるかもしれない。しかし、では最初の水素はどこから来るのだろうか?実は天然ガスなどの化石燃料から作っているのである。副生成物として水素が出てくる場合もあるが、水素もまだ化石燃料に依存しているのである。

そこで、化石燃料に依存しない水素の生産法が求められている。

その1つが生物による水素生産である。

水素を作る酵素にヒドロゲナーゼというものがある。この酵素は水素の生成および消費の両方に働く酵素である。細胞内の還元力を利用して水素を生産することができる。

この還元力はどこから来るかといえば、糖を分解することでできる。これはすべての生物共通である。しかし、光合成生物では、光合成電子伝達によって還元力を生産することができる。

ヒドロゲナーゼという酵素は酸素に弱く、酸素がある条件では失活してしまう。よって、水素は酸素がない条件、すなわち嫌気発酵条件で生産されるのである。

シアノバクテリア(ラン藻)を用いることで、光合成で還元力を生産し、その還元力を用いることで、シアノバクテリアは嫌気発酵条件で水素を生産することができるのである。



別の項でも紹介するが、環境バイオテクノロジー研究室では、遺伝子改変によって水素の新しい生産法の開発も行っている。これまでも水素の新しい生産方法での特許を何件か出願している。

水素はエネルギー物質であり、単価が安い。水素生産だけで採算を合わせるのは至難の技であるので、当研究室ではプラスチック生産などとの組み合わせによって水素を生産することを考えている。

2017年11月13日月曜日

バイオプラスチックPHB

意外かもしれないが、細胞の中にはバイオプラスチックの原料となる物質が色々とある。その1つがポリヒドロキシアルカン酸(polyhydroxyalkanoate)、通称PHAである。

PHAは、細菌が作るポリエステルである。PHAは総称であり、側鎖によって様々な性質を持つプラスチックになる。このうち、もっとも一般的なPHAがポリヒドロキシ酪酸(polyhydroxybutyrate)、通称PHBである。硬質系のプラスチックの原料となる。

PHBは、窒素やリンの欠乏時に細胞内で合成されることが知られている。シアノバクテリアも同様で、窒素やリンの欠乏時にPHBを合成する。シネコシスティスなどの非窒素固定型のシアノクバテリアは、窒素欠乏時に図のように緑色から黄色に変化する。この現象をブリーチまたはクロローシスと呼ぶ。このような状態の時にPHBを生産して蓄積していく。
シネコシスティスがPHBを合成することは知られているが、その生産量は低い。また、PHBの合成酵素を増加させたり、酵素活性を向上すればPHB量が増えるかと思うが、細胞はそのように単純ではなく、実際には思ったように増えないことも多い。

当研究室では、遺伝子改変シアノバクテリアを用いてシグマ因子やレスポンスレギュレーターなどの転写制御因子を利用したPHBの増産を行っている。すなわち、「PHB増産における一風変わった方法」を創出するのが目的である。また、この生産系では、炭素原が二酸化炭素であるため、糖類を使わずに二酸化炭素からプラスチック原料を生産していると言える。このような生産方法を特許出願や論文化していくことで、新しいPHB生産法を開発し、将来的には組み合わせることで、生産量を増大させたいと考えている。

一方で、PHBは物性上そのままでは応用展開が難しいとのことである。そのため、実生産に向けては側鎖を改変するなど、量だけではなく、質の向上も必要である。

2017年11月12日日曜日

環境バイオテクノロジー研究室の人々

明治大学農学部農芸化学科2015年4月にできた環境バイオテクノロジー研究室。発足と同時に一期生がやってきて、現在最高学年は、M1である。ちなみに明大の場合は、修士1年生ではなく、博士前期課程1年生という呼び方をする。

現在の4年生が2期生、3年生が3期生となる。このほかにはポスドクとテクスタがいる。2017年度は26人という大所帯である。大人数だなあ・・・(場所は広くないのですが・・・)。



研究室への配属を考える学生からすれば、小山内研の先輩たちはどんな人々か気になるところだろう。ということで、小山内の私見を述べたいと思う。

1. 勉強できる子が多い。
なんだかんだ言いながら、良い成績を取っている学生が多い。3年生はまだ授業などがあるはずだが、あまりレポートなどでヒーヒー言っているイメージがない。見せていないだけかもしれないが。

2. みんな違って、みんないい。
これが小山内研の最大の特徴である。ゴーイングマイウェイ。自分のことは自分で決めましょう。人は人、自分は自分。

一期生の時からこの特徴が際立っていて、ポスター発表してもみんなバラバラのポスターフォーマットだったり、示し合わせてもいないのに卒業式の着物もばらばらだったり笑。どんな人がいますかと言われても、みんな個性的な過ぎて一言では言い表せない。あ、一見優等生に見えるところは似ているかもしれないが・・・一見だけれど・・・

ちなみにこの人と違うことをしなさいというのは、講義のレポート課題でも推奨している。学会でフォーマットを自分で考えるのもいい練習になると思うので、こちらも推奨している。みんななんとなく自分の考えに合う先生を選ぶものだろうか・・

3. 変な酒の飲み方はしない
小山内研の飲み会ではあまり荒れたり、倒れたりした話は聞いたことがない。耳に入っていないだけかもしれないが笑。あまり、ウェーイみたいな飲み会はしない研究室だと思っているのだが・・・。いや、多分・・・

あれ、たった3つで終わってしまった笑。なぜならみんな個性的なので一言で言い表せないからである。 

また、同じ人でも相性や関係性によって異なると思うので、気になる人はぜひ研究室見学に来て、先輩たちと接して欲しい。やや冗談ぽく変なことを書いたが、みんないい子で優秀な人々だと思う。

追伸
ふと思い出した。最後に言うべきことがもう1つあった。

4. 研究を通してどんどん成長している。
最高学年がM1。まだ研究室が発足して2年と7ヶ月。正直こんなに成果が挙がるとは夢にも思っていなかった。着任して一番驚いたこと。それは、「学生って、こんなに優秀なの?」かも(しばらく理研にいたので学生と接していなかった)。
ただし、実験計画策定・論文作成など、研究には「型」があるので、基本の型を学ぶのには少し時間がかかる。どんなに運動神経が良くても野球やサッカーはすぐにはできない。それを学ぶのに忍耐が必要である。しかし、研究を通して、みんなとても成長していると思う。