2017年11月13日月曜日

バイオプラスチックPHB

意外かもしれないが、細胞の中にはバイオプラスチックの原料となる物質が色々とある。その1つがポリヒドロキシアルカン酸(polyhydroxyalkanoate)、通称PHAである。

PHAは、細菌が作るポリエステルである。PHAは総称であり、側鎖によって様々な性質を持つプラスチックになる。このうち、もっとも一般的なPHAがポリヒドロキシ酪酸(polyhydroxybutyrate)、通称PHBである。硬質系のプラスチックの原料となる。

PHBは、窒素やリンの欠乏時に細胞内で合成されることが知られている。シアノバクテリアも同様で、窒素やリンの欠乏時にPHBを合成する。シネコシスティスなどの非窒素固定型のシアノクバテリアは、窒素欠乏時に図のように緑色から黄色に変化する。この現象をブリーチまたはクロローシスと呼ぶ。このような状態の時にPHBを生産して蓄積していく。
シネコシスティスがPHBを合成することは知られているが、その生産量は低い。また、PHBの合成酵素を増加させたり、酵素活性を向上すればPHB量が増えるかと思うが、細胞はそのように単純ではなく、実際には思ったように増えないことも多い。

当研究室では、遺伝子改変シアノバクテリアを用いてシグマ因子やレスポンスレギュレーターなどの転写制御因子を利用したPHBの増産を行っている。すなわち、「PHB増産における一風変わった方法」を創出するのが目的である。また、この生産系では、炭素原が二酸化炭素であるため、糖類を使わずに二酸化炭素からプラスチック原料を生産していると言える。このような生産方法を特許出願や論文化していくことで、新しいPHB生産法を開発し、将来的には組み合わせることで、生産量を増大させたいと考えている。

一方で、PHBは物性上そのままでは応用展開が難しいとのことである。そのため、実生産に向けては側鎖を改変するなど、量だけではなく、質の向上も必要である。

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