2018年3月11日日曜日

結局研究者の給料は低いのか?No.5

結局研究者の給料は低いのか?No.5になってしまった。いつのまにやら5回目に。

学振PD、基礎特研の話であった。今回はさきがけの話。

3. さきがけ(専任)研究者

こちらは科学技術振興機構(JST)の研究プログラムである。学振PDは日本学術振興会、基礎特研は理研独自の制度である。

さきがけとは、国の戦略目標に沿った研究領域があり、その中でその戦略目標の推進に沿った研究者を公募で選び、領域の研究を推進するプロジェクトである。

http://www.jst.go.jp/kisoken/presto/about/index.html

研究領域は毎年有識者で話し合われて、文部科学省で決定される。このため、どんなに優秀でも領域が合わないとさきがけ研究者にはなれない。

また、さきがけは学振PD、基礎特研とは異なり、すでにポジションがある研究者の研究費を提供するのが主である。一応若手向けではあるのだけれど、准教授どころか教授すらさきがけ研究に応募する状態である。なので、そういう人たちと公募で争うのでとても大変である。

前回理研の基礎特研に採択されたと述べたが、ちょうど私が基礎特研になった1年目に「藻類バイオエネルギー領域」が立ち上がった。研究総括は、農工大の前学長である松永先生であった。

これを見たときに、「自分のための領域ではないか!?」と思うくらいぴったりだった。ということで、領域発足1年目にさきがけに応募し、採択された。

学振PD→理研基礎特研→JSTさきがけなんて、自分でも奇跡だと思っている(もちろん努力はたくさんしたのだけれど)。

ちなみに基礎特研は3年間でまだ残り2年間あったのだが、辞退した。

実はこれは失敗だった。さきがけに選ばれた辞退しなければならないと思っていたのだけれど、別に辞退しなくても良かったらしい。

ただし、基礎特研のテーマはシロイヌナズナで、さきがけはラン藻だったので、まあ、テーマがだいぶ異なるので、そういった意味では辞退して良かったと思う。

何が失敗だったかというと、給料のことである。

前回基礎特研は年収650万円と書いたが、実はさきがけ研究者はそれよりも高い

正確にいうと、さきがけは「専任研究者」というものがあり、JST雇用となり、JSTから直接給与が支払われることになる。これに対し、大学の助教や講師、准教授などがさきがけを取得した場合は、自分の所属機関の給料にプラスアルファで10万円が支給される(現在は9万円になったらしい)。

それで、さきがけ専任研究者の給与はいくらかというと、FAQで公開されているが、年収700~800万円である。年齢によって3段階に分かれ、30代はじめでもらった私は700万円プラスアルファであった(プラスアルファがいくらかはちょっと濁す)。ということで、基礎特研よりも良いが、基礎特研に10万円をプラスをした額よりは劣る。まあ、いいのだけれど。

ちなみに私のときはとても運が悪く、事業仕分けのため、さきがけの3年半のプロジェクトが3年になってしまった。また、東日本大震災のため、途中で給料が8%カットになった。8%カットだと、およそ年間60万円、月5万円のカットである。このように、研究者は政治などの動きと自分の生活が直結してくるのである。

また、このさきがけも退職金はない。年金は厚生年金ではある。

このころは最も忙しくて、朝の3時半〜4時半には勝手に目が覚めて、PCに向かって論文などを書いていた。今も4時半くらいには起きているが、この時ほどのプレッシャーではないと思う。さきがけでたくさん鍛えられたため、論文を書くスピードが格段に上がったと思う。今は私立大学なので、相対的に講義や実習、その他の業務が多いが、論文が書けるのはこのときの鍛錬に他ならない。

ということで、5回に渡ってブログを書いたが、研究者もうまくすると、悪くない給料がもらえる。ただし、自分はかなり運が良くうまくいったと思う(繰り返すが、もちろん努力はした)。

また、ここまでやっても来年度がどうなるかわからないというプレッシャーはすごかった。結果としてはうまくいったが、1つ間違えればどうなっていたかわからない。

最近は、アカデミックの研究者を目指す人が減っている。悲惨な話が蔓延してしまっているせいかもしれないが、みんながみんな貧しいわけではないことを強調したい

また、紹介したポジションはすべて裁量労働制であった。このため、研究さえ進んでいれば、子供との時間を取ることができた。かなり子育てをしたと思うので、これは自分でも誇りであると思うし、子供の可愛さを知ることはお金には変えられないと思う。

確かにもっと給料の良い職業はいくらでもある。しかし、研究者にはお金以外のメリットもたくさんあると思う。自分自身は、研究者の道に進んだことは一度も後悔したことがなく(とはいえ、任期制の時は精神的に辛かったが)、今でも(知らないだけだけかもしれないが)これ以上良い職業も思いつかない。

現代はいろいろな情報があふれていて、その取捨選択が本当に難しい。しかし、一度きりの人生を、他人の噂で決めてしまって挑戦しなかったとすると、一生悔いを残してしまうかもしれない。どんな道であれ、自分が進みたい道を選び、そこで生き残るために最大限の工夫をしていくことが、幸せへの道だと考えている。


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