2017年11月23日木曜日

コハク酸がプラスチック!?

コハク酸と言えば、生物を選択した高校生は知っているかもしれない。クエン酸回路はほとんどすべての生物が有する大事な代謝回路であり、クレブス回路、TCA回路とも呼ばれている。受験勉強ともなればクエン酸回路は覚えるのかもしれない(生物を選択していなかったので、不明)。

また、中学・高校の実験でコハク酸を熱して溶かしてから徐々に冷やしていき、コハク酸の結晶を作ったことがあるかもしれない。

そんなコハク酸だが、実は汎用的な工業原料であり、ポリブチレンサクシネートというプラスチックの原料となることはあまり知られていない。コハク酸はもともと石油から無水マレイン酸を経て合成されきたが、バイオでのコハク酸の発酵による生産に置き換わってきており、熾烈な争いとなっている。バイオアンバー社、ミリアント社、DSM社、BASF社などでのバイオコハク酸の生産は、年間数万トンを越え、現在も増加している。

現在のバイオコハク酸生産は、酵母や大腸菌などの従属栄養生物を用いて行われている。これらの従属栄養生物に糖を炭素源として与えて、発酵によってコハク酸を生産している。

しかし、原料としての糖は値段が高い。そこで我々は、シアノバクテリアなどの微細藻類を使って大気中の二酸化炭素からコハク酸を生産しようと考えた。

シアノバクテリアのコハク酸生産はほとんど研究されておらず、唯一アメリカのグループが嫌気条件でコハク酸を細胞外に放出することを明らかにしていたが、その量はほとんど痕跡量であり、水素生産などのついでに調べていただけであった。

我々の研究室は、単細胞性シアノバクテリアであるシネコシスティスを嫌気発酵条件にすることで、細胞外に二酸化炭素を由来とするコハク酸を放出することを発見した。
https://www.meiji.ac.jp/koho/press/2015/6t5h7p00000jc80a.html

まだまだ産業となっているバイオコハク酸よりも生産効率が低いので生産コストははるかに高い。しかし、産業界からもいずれは二酸化炭素から化成品を製造したいというニーズがある。今後もどんどん研究を発展させ、二酸化炭素からのコハク酸生産技術を明治大学から発信していきたいと考えている。

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