水素は次世代のエネルギー源として注目を浴びている。「水素社会の到来か?」といったフレーズがメディアを賑わすなど、化石燃料に変わるエネルギー源として期待されている。
水の電気分解で水素と酸素が発生するというのは理科の実験でも行ったかもしれない。水素の利用は、まさにこの逆の反応である。すなわち、水素と酸素から水ができる際に電気エネルギーが得られるのである。これが燃料電池の簡単な原理である。
2017年には家庭用燃料電池「エネファーム」の出荷台数20万台を突破したのとのことで、現在も水素の利用は広がっている。経済産業省の資料によれば、家庭用燃料電池を2020年に140万台、2030年に530万台に普及させようとしている。
このほかにも燃料電池自動車を2020年までに4万台、2025年までに20万台、そして水素ステーションを2020年までに160箇所、2025年までに320箇所に普及させようというロードマップが描かれている。
ところが、様々な課題も残されている。現在水素と酸素が反応して、エネルギーと水ができると言われれば非常にクリーンに聞こえるかもしれない。しかし、では最初の水素はどこから来るのだろうか?実は天然ガスなどの化石燃料から作っているのである。副生成物として水素が出てくる場合もあるが、水素もまだ化石燃料に依存しているのである。
そこで、化石燃料に依存しない水素の生産法が求められている。
その1つが生物による水素生産である。
水素を作る酵素にヒドロゲナーゼというものがある。この酵素は水素の生成および消費の両方に働く酵素である。細胞内の還元力を利用して水素を生産することができる。
この還元力はどこから来るかといえば、糖を分解することでできる。これはすべての生物共通である。しかし、光合成生物では、光合成電子伝達によって還元力を生産することができる。
ヒドロゲナーゼという酵素は酸素に弱く、酸素がある条件では失活してしまう。よって、水素は酸素がない条件、すなわち嫌気発酵条件で生産されるのである。
シアノバクテリア(ラン藻)を用いることで、光合成で還元力を生産し、その還元力を用いることで、シアノバクテリアは嫌気発酵条件で水素を生産することができるのである。
別の項でも紹介するが、環境バイオテクノロジー研究室では、遺伝子改変によって水素の新しい生産法の開発も行っている。これまでも水素の新しい生産方法での特許を何件か出願している。
水素はエネルギー物質であり、単価が安い。水素生産だけで採算を合わせるのは至難の技であるので、当研究室ではプラスチック生産などとの組み合わせによって水素を生産することを考えている。
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