2017年11月4日土曜日

炭素・窒素バランスセンサーPII結合タンパク質PamA

"Identification of PamA as a PII-binding membrane protein important in nitrogen-related and sugar-catabolic gene expression in Synechocystis sp. PCC 6803."

Osanai T, Sato S, Tabata S, Tanaka K.

J. Biol. Chem. 2005, 280:34684-90.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16109709

こちらの論文は、本来ならば私の「最初の1本目」になるはずだった論文である。

この論文は、PII(ピーツー)タンパク質の結合タンパク質を発見したものである。

教科書を読むと、例えば炭素代謝の章では解糖系、酸化的ペントースリン酸経路、カルビンサイクル、窒素代謝の章ではアミノ酸代謝などが出てくる。しかし、細胞内では区別があるわけではない。細胞内では複雑な代謝がどのようにバランスを取りながら制御されているのか?という疑問がわく。

この問いに対して、最も単純な酸素発生型光合成生物であるシアノバクテリアを研究材料として、特に炭素と窒素のバランスに着目して研究を進めようというのが、私が大学院生のときに与えられた研究テーマであった。今思っても良いテーマだった(その後の苦しみを語るのはまた別の機会にしよう)。

PIIというタンパク質は、大腸菌などでよく解析が行われており、窒素同化酵素の活性や窒素関連遺伝子の発現を制御する。PIIが直接結合して制御するタンパク質も複数知られていた。
しかし、当時シアノバクテリアのPIIについては、窒素代謝に関わることが知られていたものの、直接結合するタンパク質が見つかっておらず、競争になっていた。


2004年に初めてPIIの結合タンパク質としてアスパラギン酸代謝に関わる酵素が同定された。

本研究はそれに続き、PIIの結合タンパク質として機能未知のタンパク質であるSll0985を見つけた。かずさDNA研究所の佐藤修正先生、田畑哲之先生の酵母ツーハイブリッド解析のおかけである。

このSll0985をPII-associated membrane protein(PamA)と名付け、欠損株の機能解析を行った。その結果、硝酸トランスポーターなどの窒素関連遺伝子の発現や、シグマ因子SigEの発現が低下することがわかった。この時同時に解析していたSigEは、糖代謝の制御因子であるため、PII&PamAの制御下に、窒素と炭素(糖)の代謝に関わる遺伝子があることが明らかになったのである。


残念ながらPamAの機能はまだ明らかになっていない。PamAは膜タンパク質で、イオンチャネルであると思われている。窒素に関わるイオンチャネルの機能はわからないが、いつの日か明らかになって欲しいと考えている。

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