リツイートされてきたのでもう少し詳しく。
自分の大学院生時代のこと。どん底から復活した話である。
M2の終わりに初めての論文投稿をした。博士課程にそのまま進学することは決まっていた。バイオ系でM2の終わりに論文投稿なので、そんなに悪い方ではないとは思う。
その頃は自信満々で「これならPNASに通る!」なんて思いながら投稿した。最初の審査も通ってしまったことで変に期待も膨らむ。若さって羨ましい。しかし、現実は残酷。リジェクト。いやはや相当なショックだった。
外国の研究室と競争をしているテーマだったので、急いで出そうという方針に。自分では全く納得いかなかったが、日本分子生物学会の某雑誌に投稿。
しかし、なんと通らない。リジェクトではないが、どう考えてもリバイスコメントが厳しすぎる。全部やったら2年くらいかかるんじゃというコメント(今思っても、あの雑誌はレベルの割に厳しすぎてどうかと思うが。それ依頼投稿していなので今の状況はわからないが)。完全にダメと言われるわけでもなく、しかし、果てしない実験の要求。周りの見えておらず、余裕もない大学院生にとって、これはとてもきつかった。
投稿先などを変えたいが指導教官に許してもらえず。当然険悪な仲になっていった。
当時は、「自分は論文の通らない星の元に生まれたのではないか」と本気で思っていた。体調は最悪。毎日ふらふらしながらかろうじて研究室へ。そして、そんな状態にもかかわらず、週7日で研究室に行っていた。過去に戻れるなら本当に止めたいものである。
そんな状態でまともに研究なんてできるはずもない。論文にしたメインテーマなんて見たくもなかったし、そのテーマについて先生と話せる状態でもなかった。
そんな時にかろうじてやっていたのが、「そういえば、サブテーマの方で少しデータがでていたから、n数を増やして標準偏差をつけるのと、コントロールでも取ってデータを綺麗にしておこう」だった。
新しい実験に挑戦なんていう元気はまったくないし、メインテーマは進める環境でも気分でもない。そんな中、そういえばサブテーマもよく見れば結果が出ていたことを思い出す。かといって元気はないので、新しい実験をするのは無理だった。なので、n数を増やすこと、コントロールをとるなど、データを綺麗する作業だけがかろうじてできた。
ちなみにデータを綺麗するとは、n数やコントロールを増やすだけでなく、他の方法で結果を再確認することも含む。例えば、窒素欠乏処理で遺伝子Aの発現が上がったとしたら、擬似的に窒素欠乏になる薬剤でも遺伝子Aの発現が上がるかを試すなどである。1つの結果を2つ、3つの方法で確認することである。
今でも辞めずによく続けたと思うが、この作業がすべてをひっくり返してくれた。
メインテーマは論文投稿してから1年以上通らない。実質休止。そうこうしているうちに、サブテーマのデータが綺麗になってきた。「あれ、これ結構シンプルで良い論文になるのでは?」と思ってきたのがD1の終わり頃。そして、指導教官に直訴してPNASに投稿。少し元気が復活してきていた。別のテーマだったので話しやすかったのも大きかった。
しかし、結果は即リジェクト。まあ、シンプルな話であったので仕方ないかと思う。ただでは負けないくらいの闘争心は復活していた。いや、プライドはすでにズタズタだったので、「失うものなんてない!」くらいのLooserとしての挑戦だった。投稿先は絶対に自分が決めると決意して、J. Biol. Chem.に投稿。
そうしたら、、、なんとマイナーリビジョンの判定。追加実験なし、ほぼ即アクセプトといってもいいくらいだった(少し文章は直したが)。本当に奇跡みたいな瞬間だった。
その論文はこちら。D2の6月のことであった。
それからは元気も回復し、メインテーマも強気になる。もちろんやることはやる。論文はほとんど最初から書き直し。改めて見ると、確かに話は散らばっている。悪い時は全部人のせいにして、自分のやるべきことをおろそかにしていた。反省。そして再投稿。こちらも直訴して、J. Biol. Chem.に投稿させてもらった。
そうしたら、、、なんとこちらも3ヶ月くらいで通るという幸運が舞い込む。1ヶ月くらい追加実験はしたが、大したことはなかった。その論文はこちら。
ということで、どん底でまったく元気がなかった時に、
1. コントロール実験を追加する
2. n数を増やして再現性を高める
など、データを綺麗にするという作業を行うことで光が射した。あの時これをやらずに、例えば新しいテーマに手を広げていたら、今はなかっただろう。博士号もとれなかったかもしれない。
研究をしていれば、疲れてしまってもう無理!という時もあると思う。そんな時には、あまり頭を使わず、かつ、すでに慣れている実験をして、持っているデータを綺麗にすることは非常におすすめである。自分はこれで救われたので、研究に疲れた人には、お勧めな作業である。もちろん、十分な睡眠と食事は必須なのはいうまでもない。
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