2018年7月6日金曜日

ブラック側の人ってどこにいるのか?

SNSなどのタイムラインを見ていると、世の中はブラック企業についてとても敏感になっていることがわかる。

ニュースで過労死などの事件があると大きく取り上げられるし、それらのニュースはSNSでのたくさん取り上げられる。

見ていると多いのが、「うちの会社は・・・でひどい!」といった自分のブラック体験談である。それに対し、賛同する意見をたくさん見かける。

一方、少し上の立場の人の発言を見ると、「うちでは絶対そんなことはない。信じられない!」といった類のものが多い。

こういうやりとりをたくさんみているのだが、ふと思うことがある。

タイムライン上を見ていると、「ブラック企業側の人が全くいないんだけど、どこにいるんだろう?」と思う。

経営者や上の立場の人間は少ないということだろうか?しかし、結構上の立場の人々もSNSをたくさんやっている。社長がSNSをやるなんて当たり前の時代である。

SNSをやっているような人はホワイトな人が多くて、ブラックな人はあまりやっていないということだろうか?それにしても全く見かけないというのも不思議なものだと思う。

私の中での結論の一つは、多くの人が「まさか自分がブラック側の人間であるとは、夢にも思っていない」である。

ブラック企業のニュースで出てくる例として、社長の言い分は「会社をよくしようと思った」、「もっと利益をあげて社員の給料をあげようと思った」、「会社がつぶれないように必死だった」という発言がある。これは言い訳としての側面もあるだろうが、実際にそう思っているのだろうし、確かに間違っているとは言えない。恐ろしく儲かっていれば、みんあが9時ー17時で帰って残業や土日出勤なんて必要ないだろう。そうもいかないかないし、儲かっていても将来どうなるかわからないからそのように働くのだろう。

世界的にもすごい仕事を成し遂げた企業が物語化されたりするが、よくよく読むと「盆暮れ正月なしで、絶対不可能と思われる事業を達成した!」など、労働問題から見ると、ただのブラック企業では?と思う事例が、成功例として挙げられていたりする。過去の話かもしれないが、たしかに大きな成功を収めようとする場合、人よりもたくさん働かなければ難しい成功とブラックな労働は背中合わせである

また、非常に大事なことであるが、「自分の立場はそれほど上ではないので、ブラック企業側になり得ない」と、身分の問題から自分はブラック発言をしても免責されている(ブラック側ではない、ブラック側にはなり得ない)と考えている人も大勢いる。

これは過去の実体験であるが、自分が雇用している人に対して、1時間の残業を強いるなんていうのは絶対に認められなかった。現在もそうである。実際にトラブルなどを除いて、そんな残業を強いたことなどない(できないと言った方が正しい)。ところが、自分の労働を振り返ると、人を雇用するような研究費を取ってくるには、朝晩・土日と時間が空いたらPCに向かわなければならない。

また、現在でもそうであるが、朝晩・土日に急な業務をお願いされることも少なくない。

そして、これらのお願いというのは、過去の経験上、上の立場の人がしてくるだけでなく、むしろ下の立場の人がしてくることが多かった

なぜかというと、特にアカデミックの研究業界で言えば、上の立場の人は身分が安定しているので、言ってしまえば成果が挙がらなくても生活には困らない。

ところが、任期制の研究員、技術員、派遣職員、パートタイマーなどは、研究費によって雇用されている場合が多く、研究成果が挙がらないことが生活に直結する。

このため、私の場合、土日に学会や業務もたくさんあるので実質的に有給休暇取得が年間0日である生活がずっと続いているのだが、雇用している人たちからもっと休んでくださいと言われたことは一度もないし、「好きでやっているんだから」という類のことしか言われたことがない。

つまり、ブラック企業の社長のように経営者ではないが、自分の利益となれば、人のブラックな労働に目を瞑る人は結構多いのである。

と、なんかとても殺伐としたことを書いたが、実際には自分は好きに働いているのでそんなにブラックな扱いを受けていると感じたことはない。また、自己利益ばかり考えている人はどこの職場でもだんだんにセレクションがかかり、結局「いい人」が残っていくので、今の状況はとても幸せである。

この文章で言いたいことは、愚痴ではなく自戒である。

自分は研究室のPIであり、スタッフを雇用する立場でもある。特にうちの研究室では、学部・修士で原著論文を出そうという高い目標を掲げている。そうすると、ブラック問題と背中合わせなのである。

うちの研究室では「労働時間を長くすることは禁止」と公言してあるのだけれど、一方で目標の設定が高いので、「人より工夫をしなければならない」というのは最低条件である。

言うのは簡単であるが、実行するのは難しいだろう。だからこそ自分も時間が空けばPCに向かって仕事をしてしまう。

もちろん自分も研究成果が挙がり、学生が成長し、ポスドクが成果を挙げてポジションを獲得することができ、スタッフの生活のために研究費が取れるようになればよいと思って仕事をしているし、仕事をお願いしている。

しかし、繰り返すが、頑張ることは常にブラック問題と背中合わせなのである。特に「いい人」ほど仕事が集中してしまい、負荷がかかるのはどこの世界でも一緒である。

そこでこれらを見極めて、いい人には強制的にでも休みを与えなければいけないと考えているのだけれど、そういう人に限ってなかなか休まなかったりするし、強制的に休みを与えるといのもあまり良い方法ではないだろう。常に悩みの種である。

このように、現在はPIの立場として考えているが、誰しもが自分の利益のためにブラック側になってしまう可能性がある。理想の形は人それぞれなので、職場で話し合ってきめていくしかないと思っている。しかし、労働問題は、金銭が絡むので、なかなか冷静な話し合いができないこともある。SNSなんかを見ていても、給料や身分の話になるとすぐに紛糾して、しばしば喧嘩になっている。

せめて冷静になって話し合い、それぞれにあった労働環境を構築していくのがベストであると考えている。こまめに話し合うことが必須である。

タイムラインを見ていて、みんながみんなブラック側に虐げられる立場なので、ふとこんなことを思った。

労働問題・人間関係は終わりなき悩ましい問題である。

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