"Positive regulation of sugar catabolic pathways in the cyanobacterium Synechocystis sp. PCC 6803 by the group 2 sigma factor sigE."
Osanai T, Kanesaki Y, Nakano T, Takahashi H, Asayama M, Shirai M, Kanehisa M, Suzuki I, Murata N, Tanaka K.J. Biol. Chem. 2005, 280:30653-9.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15944148
この論文は、私の最初の論文であり、大学院博士課程2年生の時に初めて出版した論文である。当時は東大分子細胞生物学研究所の田中寛教授(現 東工大化学生命科学研究所)の研究室に所属していた。
RNAポリメラーゼは、転写(DNAを鋳型としたRNAの合成)を行う酵素である。細菌のRNAポリメラーゼは複数のタンパク質からなり、このうち、プロモータDNAに結合し、転写を開始させるタンパク質をシグマ因子(σ因子)という。
一般的に、細菌はシグマ因子を複数有しており、シグマ因子を切り替えることで、転写する遺伝子の種類と転写量を変化させることができる。
単細胞性非窒素固定型のシアノバクテリアであるSynechocystis sp. PCC 6803には、9つのシグマ因子SigA~SigIがある。シグマ因子を切り替えることによって、転写プロファイルを変えると考えられているが、その切り替えについては未知な点が多かった。
このうち、SigEは窒素欠乏時に発現誘導を受けることが知られていたが、その制御下にある遺伝子は不明であった。
この論文では、sigE欠損株を用いてトランスクリプトーム解析を行った。その結果、sigE欠損株では、グリコーゲン異化、解糖系、酸化的ペントースリン酸経路といった糖異化酵素遺伝子群の発現が包括的に低下していることがわかった。
sigE欠損株では、酸化的ペントースリン酸経路の鍵酵素の活性が低下していたり、暗条件で生存率が低下することもわかった。
このように、この論文ではSigEという因子が糖異化(糖の分解経路)を包括的に制御する因子であることを明らかにしたのである。糖の代謝ではなく、異化反応、すなわち分解反応のみがSigEの制御下にあるという点が重要である。SigEを使うことによって、糖の流れを決定することでできるのである。
また、SigEの制御下に入っている酵素遺伝子を見てみると、不可逆反応の酵素が多いことがわかる。可逆反応の酵素を増やしても代謝の方向は変わらないが、不可逆反応の酵素を増やせば代謝の方向が決まる。生物は実によくできていると感心させられる。
このように、代謝経路レベルで制御するシグマ因子というのは、他の生物でもあまり例を見ず、非常に珍しい発見であった。
RNAポリメラーゼは、転写(DNAを鋳型としたRNAの合成)を行う酵素である。細菌のRNAポリメラーゼは複数のタンパク質からなり、このうち、プロモータDNAに結合し、転写を開始させるタンパク質をシグマ因子(σ因子)という。
一般的に、細菌はシグマ因子を複数有しており、シグマ因子を切り替えることで、転写する遺伝子の種類と転写量を変化させることができる。
単細胞性非窒素固定型のシアノバクテリアであるSynechocystis sp. PCC 6803には、9つのシグマ因子SigA~SigIがある。シグマ因子を切り替えることによって、転写プロファイルを変えると考えられているが、その切り替えについては未知な点が多かった。
このうち、SigEは窒素欠乏時に発現誘導を受けることが知られていたが、その制御下にある遺伝子は不明であった。
この論文では、sigE欠損株を用いてトランスクリプトーム解析を行った。その結果、sigE欠損株では、グリコーゲン異化、解糖系、酸化的ペントースリン酸経路といった糖異化酵素遺伝子群の発現が包括的に低下していることがわかった。
sigE欠損株では、酸化的ペントースリン酸経路の鍵酵素の活性が低下していたり、暗条件で生存率が低下することもわかった。
このように、この論文ではSigEという因子が糖異化(糖の分解経路)を包括的に制御する因子であることを明らかにしたのである。糖の代謝ではなく、異化反応、すなわち分解反応のみがSigEの制御下にあるという点が重要である。SigEを使うことによって、糖の流れを決定することでできるのである。
また、SigEの制御下に入っている酵素遺伝子を見てみると、不可逆反応の酵素が多いことがわかる。可逆反応の酵素を増やしても代謝の方向は変わらないが、不可逆反応の酵素を増やせば代謝の方向が決まる。生物は実によくできていると感心させられる。
このように、代謝経路レベルで制御するシグマ因子というのは、他の生物でもあまり例を見ず、非常に珍しい発見であった。
0 件のコメント:
コメントを投稿