環境バイオテクノロジー研究室ができて、3年と4ヶ月弱。時の流れは早いものである。
一期生はM2(修士課程2年、博士前期課程2年)になった。すでに全員筆頭著者論文があり、一番多い子は5本目の論文に取り組んでいる。また、M1、B4と続々と筆頭著者論文作成に取り組んでいる。素晴らしいことである。
さて、こうしてみんなたくさん成果を挙げているが、では学生の様子はどうなのか気になるかもしれない。成果が出て、さぞかし満足で楽そうで、幸せそうな顔をしているだろうか?
これは違う。
「みんな大変そうな顔をしている」
というのが、一般的な正解だと思う。個人差はあると思うが。
成果が出ているのになんで?と思うかもしれない。言ってしまえば、これから何も実験しなくても修士号が取れるような実績がでているからである。
しかし、大変そうな顔をしているのにはいくつかの理由があると思う。
1. そもそも目標が高い。
学部や修士で論文を出すくらいである。ようするにもともと志が高いのである。そういう人からすると、1本や2本の論文は通過点である。なので、多少の成果が挙がっても、ゴールとは思わず、次、その次と成果を求めていく。
2. 外部の評価をたくさん受ける羽目になる。
良い成果が挙がると、「じゃあ、その結果を誰々に話して議論しよう」となる。また、学会で発表したり、上記のようにい論文を作成して投稿することになる。ようするに、外部の評価をたくさん受けることになる。
残念ながら、外部の評価が賞賛ばかりであるなんてことは絶対にない。むしろ、「あれが足りない」「この部分が甘い」などなどやることがたくさん増えてしまったり、場合によっては研究そのものに否定的な意見をもらうこともある。
こうしたやり取りの中で、だんだんに自分の研究が鍛えらえれていくのだが、やはり外部の評価を受けるということは非常に大変なことである。なので、研究成果をあげる人ほどたくさんの外部評価を受けることになり、その結果、辛い目に合うことも多くなる。ただし、それこそが成長に繋がることは言うまでもない
3. 外部の期待が高まって、ハードルがどんどん挙がっていく。
会社の営業職でよくある話だが、営業目標と突破すると、次はさらに高い目標が設定され、それを突破するとさらに・・というものがある。
別に目標を突破したからといって、次回も簡単に目標を突破できるとは限らないのだけれど、外部の期待は、「前回のレベルは当然として、次はさらに高いものを」となる。
イチローの全盛期のインタビューで、「周りの人からまずは(年間ヒット)200本だねと軽く言われる」と言うものがあったと思う。一度達成してしまうと、恐ろしく高かった目標が当たり前に設定されてしまうのである。
研究でもこれと同様で、成果を挙げた人は、もっと成果が上がるだろう!という期待がどんどん膨らんでしまう。そして、少しの成果では喜ばれなくなってしまうのである。
このように、いろんな原因があると思うが、一般的には成果を上げている人は、大変そうな顔をしていることが多いと思う。これはうちの学生の話ではなく、一般論としてもそうではないかと思う。上の営業やスポーツの話にも当てはまると思う。
若いうちはがむしゃらにがんばるのかもしれないが、あまりすべての期待に応えようとすると、はたから見たら成功しているようにしか見えない人でも心身を崩してしまうことがある。
研究の場合、論文などで成果が挙がっている人は、これからどんなに失敗したとしても論文が消えたりはしないので、ある程度は楽観的になってよいと思う。その上で、うまく自分で目標を設定し、心身を崩さないことを最優先に研究に取り組んで欲しいと思う。
目標を適切に設定することはとても大事で、自分自身も日々何をどれくらい達成するかを自問自答し、それを周りと議論して考えている。目標設定とはそれくらい大事なものなのである。
目標設定が曖昧だと、どんなに頑張っても永遠にハードルが挙がっていく沼にはまってしまう。柔軟にかつ論理的に自分の目標を設定していって欲しいと思う。
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