2018年1月8日月曜日

【重要】原著論文の書き方 〜No.3〜

原著論文の書き方 〜No.3〜である。ここまででFigureファイルを作りながら、イントロダクション(序論)までを作っていった。

論文作成手順4. Materials and Methodsを作成する。
はっきりいって、この手順はあまり考えることはない。やったことを淡々と記述していく。

ただし、注意点がいくつかあり、一言で言うと「記述するのが面倒だからといって、省略してはいけない」である。

「溶液Aと酵素Bを混ぜて反応させ、遠心をして上清を新しいプラスチックチューブに移して、次に蒸発させて・・・」

は誤りである。

「X μLの溶液AとX μLの酵素B(メーカー名、都市、国)を混ぜて何度で何分間反応させ、遠心(X min, X,000 x g)をしてX μL分の上清を新しいプラスチックチューブに移して、次にX μL分を蒸発させて・・・」

などと書かなければいけない。すなわち、読んだ人が再現できるように書くのである。

さすがにマイクロピペットを使ってとかは書かない。また、エタノール沈殿くらいならば「Ethanol precipitationを行った」くらいだけれど、それ以外は基本的には記載しなければならない。

また、論文に日本語フォントは混ぜてはいけない。(この記事では、ブログアプリの関係上、”マイクロ”が日本語変換になっている)

ほとんどの論文がTimes New Roman(or Times)になっているので、このフォントのまま、Wordの「挿入」→「記号」→「記号と特殊文字」で特殊な文字や単位を挿入する。それでも記号がない場合は、Symbolのフォントを使う。

単位の前に半角スペースを開けるのも忘れてはいけない。この辺は、レポートをしっかり書いている人は1、2年生の間に学んでいるはずである。また、日本語のスペースが入っている場合も多い。


論文作成手順5. Resultsを作成する。
これもあまり考えるところではない。Materials & MethodsとResultsが論文の中ではもっとも簡単に記述出来るところ言って良い。

Resultsでは、文章間のつながりだけ少し気をつけて、あとは結果をシンプルに記載するのみである。

注意点は、「解釈を書いてはいけない」ことである。

例えば、「遺伝子Aの欠損株で遺伝子Bの発現量が半分に低下したので、遺伝子Aは遺伝子Bの正の制御因子である。」

と書くのは誤りである。

正確には、遺伝子Aの欠損株で遺伝子Bの発現量が半分に低下した」が結果であるので、Resultsにはそれだけを書いて、Discussionで「遺伝子Aは遺伝子Bの正の制御因子である。」と記述しなければならない。後ろの文は、あくまで得られた結果を元にした解釈だからである。

論文を読んでいてもこれを混ぜって書いている場合もある。Results & Discussionという形も多いので、ついそのように書いてしまうのだけれど、まずは基本形を覚えた上で崩して欲しい。

結果と解釈をきっちりと分けておくことは、極めて重要である。論文を学ぶ非常に重要なポイントであると言っても良い。

学生との就活話で、こんな話をした記憶がある。

例えであるが、チョコレートを作るA社に就職が内定している学生がいるとする。悩みはA社のチョコレートが関西に比べて関東で売り上げが低いことである。

関東でのチョコレートの売り上げを比較すると、B社の関東でのチョコレートの売り上げがA社よりも多い。そこで「B社のチョコレートのせいで、関東ではA社のチョコレートのがあまり売れない」と考える。

こういう話をよくするのだが、これは結果(Results)と解釈(Discussion)が混じってしまっている例である。

結果と解釈を分けると、結果は
関東でのB社のチョコレートの売り上げ>関東でのA社のチョコレートの売り上げ
である。

しかし、だからと言って「B社のせいでA社のチョコレートの売り上げが低い」とは限らない。関東ではチョコレート全体の売り上げが低く、ラムネがめちゃめちゃ人気があるため、ラムネの方が競合相手かもしれない(あくまでたとえである)。また、A社とB社のチョコレートは味のカテゴリーが違うので、実は競合してないかもしれない。

これは仮定の話で、実際には”自然に出てきた”解釈が合っていることも多いのであるが、解釈を間違えた場合には、たとえ頑張ってB社と張り合ってもA社にとっては無駄な努力となる。

このように、ResultsとDiscussionを分けることには汎用性があり、アカデミックの世界のためだけのものではない。これをぜひ論文で勉強して欲しいと思っている。

No.4に続く。

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