前回に引き続き、研究室は何の役に立つのか?その3である。
環境バイオテクノロジー研究室では、判断力、コミュニケーション力、努力の3つを身につけてほしいと考えている。
その3では「説明責任」である。これは判断力とコミュニケーション力の2つに関わる内容かもしれない。
自分がやることを無数の選択肢の中から選ばなければならない。これは研究室配属で、これまでの講義や実習といった決まったスケジュールがなくなることによる大きな変化の一つである。
その2の記事では、その選択を感情的にならずに行わなければいけないということだった。
その3は「説明責任」である。
その日の行動を選び実行する。それを繰り返していくうちに2ヶ月、3ヶ月と過ぎ、ゼミなどで自分のやっていることを説明する機会が訪れるだろう。個別にディスカッションをしていれば、もっと頻繁に訪れると思う。
そんな時に聞かれるのが、「なんでそのテーマを選んだの?」、「そのテーマの重要性を教えて?」、「その実験でいいの?」、「次に何しようとしているの?」などの質問である。
これらの質問に対し、返答していかなければならない。
特になんでそのテーマを選んだか?なんて最初はその研究室から与えられたからだろう。しかし、むしろ教員は助けてくれるどころか、なんで?と聞いてくる側になることが多いと思う。
たくさん聞かれて説明を求められるとうんざりして文句の一つも言いたくなってしまう。しかし、やはり自分の行動に対する説明が必要である。
なぜならば、きちんと説明できない場合は、テーマそのものがいまいちであったり、テーマがよくても中身を理解していなくて効果的でない実験を繰り返していることが多いからである。
行動の選択肢が無数にあるが、その選択を適当にしてしまうと、失敗が多くなってしまう。どんなに頑張っても選択そのものが間違えているので、良い成果が上がらないことが多い。
しかし、「じゃあ、選択肢の中で正解は何か?」と聞かれても誰にも答えは分からない(教員がわかっていると思ったら大間違いである)。分からない中でどうやって正解と思われるものを選ぶかといえば、「◯◯だからこれをやります」と理由をつけられる選択肢を選ぶ、すなわち説明できる選択肢をを選ぶのが良いと思っている。
自分で選んだ後に、さらに他人に説明する。それで他人もすぐに納得するような選択であれば、より正解である確率が高いと言える。選択肢が無数にあり、正解が分からない世界に飛び込むからこそ、説明責任が大事なのである。
このように、自分で理由をつけられてさらに他人に説明できるか?と想像して、日々の行動を選んでいく判断力が大事である。また、他人に説明するにはコミュニケーション力も必要である。いろいろな力が必要なのであるが、研究室で説明責任を果たすことによって、自由度が高く、正解のない世界でうまく生きていけるようになるのである。
研究の世界でも「やりたいからやってるんだ!」みたいに説明責任を果たさない研究者も結構多い。天才的な人でそういう人もいるけれど、考えが甘いだけで逃げていたりするケースも多い(本当に天才的だったり、みんなに反対されても、後に大当たりしたりすることもあるので、判断が難しい)。経験上、考えが甘い場合には「やりたいからやっている」という割には本人はあまり楽しそうに見えず、少し経つとテーマを変えてしまったりする。要するに面白い理由が説明できない=実はあまりなかった、という図式である。
社会人でもこういう人はたくさんいるので、ぜひ学生には研究室で「説明責任」を果たせるようになってほしいと考えている。説明責任を果たすことで、判断力とコミュニケーション力が向上し、成果が挙がっていくと考えている。
その4に続く。
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