当環境バイオテクノロジー研究室では、シアノバクテリア、ユーグレナ、シアニディオシゾンなどの微細藻類の研究を行っている。
微細藻類の培養には、植物インキュベーターというものを用いている。うちの研究室では、トミー精工やパナソニックなどの植物インキュベータなどを用いている。これらを用いて、温度や光強度を制御している。また、自作で流路を作製し、二酸化炭素を足した空気を送り込んで微細藻類を培養している。
人工気象器(植物インキュベーター)
植物インキュベーターによる培養では、厳密に温度や光強度などの培養条件を制御できる。一方で、応用展開を考えた場合、必ずしもこれらのパラメータがすべて厳密に制御できるとは限らない。むしろ、スケールアップすればするほど制御できない部分が出てくるのである。
また、大量に培養する際に、巨大な植物インキュベーターを作るのはコストがかかる。
そこで、応用展開に向けて培養法そのものを開発していく必要がある。
実用化されている微細藻類では、野外のプールで培養されていることが多い。オープンポンド(開放池)やレースウェイなどと呼ばれる培養系で培養されることが多い。
そのほかにもプラスチックバック、いわゆるビニール袋のようなものに入れて微細藻類を培養したり、展示パネルのように固体にくっつけて培養するなどの方法で培養しているベンチャー企業もある。
しかし、このように色々な方法があるということは、裏を返すと最適な培養方法が見つかっていない、培養方法そのものに研究の余地があるとも言える。
微細藻類の場合、他の発酵に用いる微生物と異なる点は、光を要求することである。産業に用いる場合、できれば少ない容量の培養系で高密度に育つようにしたいのであるが、育てば育つほど培養液が濃くなり、光が届かなくなってしまう。この光が届かないことが律速となり、増殖が止まってしまうのが微細藻類の難しさである。
現在では、できる限り浅いプールなどで培養するであるが、そこが浅い分容積が稼げず、広大な敷地が必要となってしまう。
そこで環境バイオテクノロジー研究室でも色々な培養方法の開発を行っている。
写真はプラスチックチューブで培養した図である。内径は6mmである。
これは単細胞性シアノバクテリアであるシネコシスティスの培養の様子である。左上に写っているのがチューブポンプと言って、チューブを連続的にこすることによって中の液を移動させるポンプである。全長5mくらいのチューブで培養してみた。
左端に見える温浴で一部の細胞を最適温度である30度に温めて、全体を循環させている。また、その部分には1%の二酸化炭素を含む空気を導入し、光合成を促進させている。
光がよく当たるように、こんな風にチューブを窓にかけてみた。これで光合成がよく働きたくさん増えるはず・・・であった。
が、実際にやってみると、ポンプの力が弱く、ところどころで細胞が溜まってしまっていた。ポンプの力を強くすれば可能かもしれないが、あまりにも大量のエネルギーを投入したのでは、環境技術の意味がなくなってしまう。
ということで、やってはみたものの、研究室レベルではチューブ培養はあまりうまくいかなかった。ただし、今回はチューブポンプを使ったが、攪拌に自然エネルギーなどを使えればよいかもしれない。川沿いにある水車が良い例である。川の流れの力を利用して、水車を回転させる。このようにうまく組み合わせれば、少ないエネルギーで十分に攪拌できるかもしれない。
ということで、この培養法の開発はあまりうまくはいかなかったのであるが、当研究室ではこのような研究も行っている。新しい培養系の開発を行ってみたい学生も大歓迎である。
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