2020年2月24日月曜日

リアルタイムPCRって何?

リアルタイムPCRが話題になっている。コロナウイルスの診断法として、リアルタイムPCRを使うらしい。コロナウイルスのゲノムRNAを検出する方法である。

知らなかったので、正直驚いた。

てっきり検出する特異的な抗体があって、コロナウイルスのタンパク質を検出するものだと思っていた。特異的な抗体でタンパク質を検出するにはウエスタンブロットという方法を用いる。さらにこれが簡便化されていき、病院などで使う検査キットになっていく。

インフルエンザの診断の時に、鼻から検体を採取し、チップみたいなものにつけて、色のついた線が出るか出ないかみたいな診断をしたことがあるのではないだろうか。あれは、抗体を使ってタンパク質を検出する方法である。

一方、コロナウイルスの場合は、ゲノムがRNAである。全ての生物はゲノムがDNAであるが、ウイルスの中にはDNAではなくRNAのものもいる。

RNAは検出がとても厄介である。

そのままでは検出できないため、多段階の処理をしないと検査できない。リアルタイムPCR法と言っているが、実際にはリアルタイムPCRだけではなく、色々な処理をする。

ということで、そもそもリアルタイムPCR法とは何か、というところから始める。

1. RNAを抽出する。
そう、RNAを扱う最大の難所はここである。
RNAはDNAと違って壊れやすい。だから、サンプルを採取したあと、保存状態が悪ければあっという間に分解する。冷凍するのが一般的だけれど、壊れない保証はない。実験室で培養しているわけではないので、どういう状態でサンプルを採取したかでも変わってくる。

また、RNAを検体から抽出するのだが、ウイルスからRNAを精製するようなキットは販売されている。
https://www.qiagen.com/jp/shop/pcr/qiaamp-viral-rna-mini-kit/#productdetails
このようなものはあるので、RNAは簡便に取れるといえば取れるのだけれど、DNAと異なりRNAは壊れる。

ウイルスの診断の場合、RNAが壊れたら、陽性が陰性になってしまう。途中でRNAが壊れたら大問題なのだけれど、 RNAがなかった場合、そもそもなかったのか、途中で壊れたのか、場合によっては操作をミスった可能性もある。これらを区別することは極めて困難である。ないことの証明は、とても難しい、ある意味では不可能なのである。

2. 逆転写反応
RNAはそのままでは簡単には検出できない(RNAプローブを使うなどの手はあるが、大変すぎるのでやらない)。

なので、RNAが得られたら、次にRNAをDNAに変換する。これを逆転写反応という。
自分の講義の資料をここで。このブログ用ではないので、下の方の図だけをみてほしい。

RNAをDNAに変換するために、逆転写酵素という酵素がRNAの上を進んでいき、DNAを作っている。この反応には、DNAの材料やプライマーという反応を開始させる材料を加えておく必要がある。ちなみに次の3にいく前に、RNAを分解してDNAだけにするプロセスや、定量するプロセスが続く。

3. リアルタイムPCR
ここまできてやっとゲノムRNAがDNAになった。このRNAから作ったDNAを検出するために、リアルタイムPCRを行う(コロナウイルスの診断をみたところ、他のPCRの方法を用いることもあるようだったが、ここまでが大変なので、大差はない)。

まず、PCRとは簡単にDNAを増やす方法の1つである。温度を変えて反応を進めたり止めたりするサイクルを繰り返して、2倍、4倍、8倍とDNAを増やしていく方法である。

そして、リアルタイムPCRとは、DNAが増えていく様子をリアルタイムで測定する方法である。
特殊な蛍光色素などを入れておくと、途中でDNAが増えていく様子を機械で検出することができる。

DNAが増えていく様子を検出してどうするのかというと、増えていく様子を知ることで、もともとあったDNAの量を知るのである。そして、そのもともとあったDNAの量とはすなわち、元にあったRNAの量であり、今回の場合はウイルスの量ということになる。

では、リアルタイムでDNAが増えていく様子を見ていると、なぜDNAの量がわかるのかというと、原理はそんなに難しくない。

要するにたくさんDNAがあると早く検出でき、DNAが少ないと上の温度を変えるサイクルを何度も回さないと検出できない。このように、検出できる早さ(正確には反応サイクルの数)で、DNA、RNA、ひいてはウイルスの量をしらべるという測定法である。

ちなみにリアルタイムPCRは、最後の3の操作だけを指すので、別にRNAが出発材料である必要はない。ただし、今回のように、RNAを抽出してからDNAに変換して、最後に検出するところまでをひっくるめてリアルタイムPCR法と言うこともある。話を早くするためであり、本当は正確ではないので、便宜上のことである。

ということで、このようは多段階のステップを経てリアルタイムPCRは完了する。

では話題となっている診断の成功率はどうだろうか・・・。力尽きたのでまた後日。

講義でやったので、本学科の学生は、みんな知っていると信じたいが・・。
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