2018年3月13日火曜日

シアノバクテリアの大量培養に挑戦。。

環境バイオテクノロジー研究室では、微細藻類の研究を行っている。微細藻類とは厳密な分類ではなく、単細胞性の藻類を広く含む言葉である。当研究室で扱っているシアノバクテリアやユーグレナに加え、緑藻のモデル生物であるクラミドモナスや紅藻のシアニディオシゾン、シアニジウム、魚の餌としても知られる珪藻なんかも含まれる。

いきなり少し脱線するが、わざわざ「微細藻類」という曖昧な言葉を使うのには理由がある。上記の微細藻類の中で、シアノバクテリア(ラン藻)だけが原核生物であり、その他の緑藻、紅藻、珪藻は真核生物である。

そして藻類(Algae)と言った時には、実はシアノバクテリアを含んではいけない。そのため、シアノバクテリアを含めて議論したい場合には、「Algae and cyanobacteria」という表現になる。

ただし、簡単に話す時にこのような説明をいちいちするわけにはいかないので、一緒くたに微細藻類(Microalgae)と呼んでしまっている。

微細藻類を培養する場合、大腸菌や酵母などの微生物と最も異なる点は「光照射」が必要なことである。また、二酸化炭素などの炭素源があれば、糖は不要である。この光合成の能力が最大の魅力であり、研究対象である。




普段は数十mLから1Lのスケールで培養している。しかし、応用展開を向けて、スケールアップをしていくことが重要である。数十mLで得られた結果が、数十Lで得られる結果と必ずしも一致しないためである。

上の写真は、シアノバクテリアであるシネコシスティス(Synechocystis sp. PCC 6803)を50 Lで培養した様子である。しかもこれは人工海水をベースにした培養である。

写真で見るとすごく大量に培養できているように思える。しかし、濁度(OD730)が0.4くらいで止まってしまった。光や栄養が十分な時には濁度が10を超えるので、全然育たなかったと言えるレベルである。

このようにスケールアップをすると色々と不測の事態が起こり、その原因を追及するもの大事な研究である。今回の場合は、光が届かなくなってしまったのではないかと思っている。

また、このようにスケールアップすると、培養をしたあとの廃液処理をするのも大変である。オートクレーブで滅菌してから捨てるが、3〜4回に分けてオートクレーブをしなければならない。汲み取るのも一苦労である。スモールスケールでやっていると何てことのない作業も、ラージスケールになると色々と大変なことが出てくるのである。

第一回目のトライはなかなかうまくいかなかったが、環境バイオテクノロジー研究室では、このような応用展開を見据えた大量培養の研究も進めていきたいと考えている。

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