2018年3月22日木曜日

オープンアクセス誌掲載料高騰問題!

学会や研究会などに参加し、そのあと懇親会などに出る。このような懇親会も大事な仕事の場で、会の時間では話せないような研究内容以外の話題を話す場所でもある。最新の研究内容はオンラインで見られる昨今からすれば、懇親会での話がかなり重要であると言っても過言ではない。



これらの懇親会で最近必ずと言ってよいほど出る話題の1つが、「オープンアクセス誌の掲載料高すぎる!」というものである。研究者全会一致の意見と言っても過言ではない(多分)。

研究者にとって、論文は最大かつ最重要な研究成果の発表の場所・媒体である。

雑誌としては、Natureが有名だと思う。NatureはNature Publishing Groupから出版されている雑誌であり民間の会社から発行されているため商業誌と呼ばれている。

一方、大学や研究所、その他の非営利団体などから出版されている雑誌もたくさんある。Proceedings of the National Academy of Sciences USA(PNAS)は、アメリカの科学アカデミーの雑誌であるし、Genes & Developmentはアメリカコールドスプリングハーバー研究所の雑誌、日本でいうと、Plant & Cell Physiologyは日本植物生理学会の雑誌であるし、Journal of Bioscience and Bioengineeringは日本生物工学会の雑誌である。

これらの雑誌に掲載されるために、論文を書いて投稿し、審査を受けてやっと採択され(アクセプトされ)、雑誌に掲載されるのである。最近は、紙に印刷せずにオンラインだけのところも増えてきている。

論文が掲載されるとどうなるかというと、知らない人からは驚きかもしれないが、自分たち(著者)が印刷・編集などの「論文掲載料」を払うのである

少し前でいうと別刷りといって、自分の論文の印刷物が送られてきたが、今は頼んでいる人は少ないかもしれない。

また、図をカラーにすると余分に印刷料が取られる。最近はオンラインも増えてきたので、カラーが無料のところも増えてきた。

論文掲載料がいくらくらいかというと、上記の非営利団体の場合、だいたい数万円である。投稿を促すため、なかには無料の雑誌もある。

これで論文が掲載されるのだが、大事なことは、読者は無料で読めないことである。

一定期間後に無料になったりするが、読者は読むためにお金を支払わなければならない。ようするに、著者もお金を払うし、読者もお金を払うのである。

このようなビジネスモデルのため、世の中には論文を掲載する雑誌というものは無数にある。

ところが、この流れに拍車をかけたのが「オープンアクセス誌」である。

オープンアクセス誌とは何かと言うと、その名の通り、読者はただで読める(アクセスが開放されている)ということである。

それは素晴らしい、世のため人のためではないか、と思うかもしれないが、それは全くの誤りである。

じゃあ、どこからお金が出るのかというと、「著者の掲載料が高く、掲載料ですべてを賄う」のである。

一番人気のNature Publishing GroupのScientific Reportsでだいたい17, 18万円。スイスのFrontiers系列だと20万円を少し超えるくらいである。なんと著者は論文を書いて、このような高額な掲載料を払うのである(レートによって変わるのでご確認を)

さらにNature Publishing Groupのレベルの高いオープンアクセス誌であるNature Communicationsだとなんと70万円くらいになるらしい!

ということで、オープンアクセス誌にたくさん論文を出そうと思うと、研究を圧迫してしまうのである。本末転倒である。

じゃあ、「論文をオープンアクセス誌に出さなければいいじゃないか」というのは正しくもあり、うーん、悩ましくもある。

オープンアクセス誌の方が、無料で読める分、研究成果の伝わり方が良い。また、実は論文をオープンアクセス化していきなさいというのは予算配分機関の方針でもある。科学の知識の共有ということである。

ということで、予算と相談しつつ、年に1、2本オープンアクセス誌にすることにするかもしれない。最近たくさんだしていたのだけれど、「その予算で研究試薬などを買った方がいいのでは」と思うようになってきた。

このようなビジネスモデルから、世の中ではオープンアクセス誌がどんどん増えている。ただ、研究者の不満は結構溜まっている。いずれどこかでビジネスモデルが崩れるとは思うが、現在ではこのような形で論文が出版されているのである。

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