2018年3月25日日曜日

カリウムでコハク酸増産!?

"Anionic metabolite biosynthesis enhanced by potassium under dark, anaerobic conditions in cyanobacteria."

Ueda S*, Kawamura Y*, Iijima H, Nakajima M, Shirai T, Okamoto M, Kondo A, Hirai MY, Osanai T.

Sci. Rep. 2016, 6:32354. *同等貢献

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27576448

一期生上田さん、川村さん(当時学部4年生、既卒)が筆頭著者となった論文である。二人とも既卒である。元気かな・・・

シアノバクテリアを用いたバイオコハク酸生産のプロジェクトを抱えて明治大学に着任。コハク酸生産は、環境バイオテクノロジー研究室のメインテーマの一つである。

遺伝子改変によるコハク酸増産を明らかにしたが、こちらは培養法によるコハク酸の増産方法である。

先行研究では、単細胞性シアノバクテリアであるシネコシスティスを、暗嫌気条件で培養すると細胞外にコハク酸が放出されることを発見した。この暗嫌気条件では、バッファーや培地を用いていたが、この培養を塩濃度を変えて行なってみた。

具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムを100 mM加えて発酵させてみたのである。お試し実験で、コハク酸が増えるとはあまり期待していなかった。

ところが、コハク酸量を測定したところ、カリウムを入れた時だけコハク酸の量が2倍くらい増加した。ナトリウムやカルシウム塩では増えなかった。

メタボローム解析を行ったところ、カリウム存在下で発酵させると、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸などの有機酸の細胞内濃度が増加することが明らかになった。つまり、カリウムによって、発酵条件(暗嫌気条件)で有機酸の生合成が促進されることがわかった。

カリウム添加に、これまで取れたコハク酸をよく作る株であるSigE過剰発現&ackA欠損株(通称1299E株)を組み合わせると、コハク酸生産量が野生株の約11倍の140 mg/Lに増加することが明らかになった。また、乳酸生産も46倍の
210~220 mg/Lに増大することが明らかになった。
なぜカリウムを入れると有機酸の生合成が促進されるのかはわかっていないが、陰イオン性の代謝産物が包括的に増えるため、細胞内の電荷のバランスを取っている可能性がある。

このように、培養条件と遺伝子改変を組み合わせて、シアノバクテリアのコハク酸生産を増大させる研究を行っている。


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