2019年9月9日月曜日

移り変わる実験手法。使わなくなったものたち。

研究における実験手法は、時代とともにガラッと変わっていく。何年か前は誰もが使う技術だったものが、新しい技術に置き換えられ、誰も使わなくなる。

分子生物学の解析についても同様で、昔から今も変わらずに使う技術もあるが、もう使わなくなってしまった技術もある。

自分の一番近いところでいうと、mRNAの測定方法ではないかと思う。

転写制御の研究において、mRNAの定量は、転写という文字通り必須な手法である。

ひと昔前に主流だったのはノーザンブロットではないかと思う。

抽出したRNAを電気泳動で分離し、メンブレンに転写する。メンブレン上のRNAと目的遺伝子のプローブ(DNA or RNA)をハイブリダイズし、検出する手法である。流石に自分の時代ではRIは使っていなかったが、non-RIの手法では、最終的に抗体を使って検出するため、すごく長いプロセスが必要だった。

今でもそれなりに大変だが、今はリアルタイムPCRが主流ではないかと思う。
こちらはRNAを抽出するところまでは同じ。ただし、DNAのコンタミがあるとダメなので、DNaseをよくかけて微量なDNAも全て分解する必要がある。

そのあとは、逆転写でcDNAを合成し、合成したcDNAを用いPCRを行うものである。ただし、このPCRは普通のPCRではなく、一般的には二本鎖DNAに特異的に結合する蛍光色素を含んでPCRを行い、増幅具合をリアルタイムで測定していく。これによって、元のcDNAの量、最終的にはmRNAの量を測定するものである。

現在はノーザンブロットが減り、どんどんリアルタイムPCRになっている。

理由は簡単で、操作の簡便さとスループットの高さである。

ノーザンブロットの場合は、プローブの作製、電気泳動、ブロッティング、検出(non-RIの場合は、例えばDIGで抗体を使う)となる。

リアルタイムPCRの場合は、DNase処理、cDNA作製、リアタイムPCRである。

なんと言っても大きいのは、リアルタイムPCRの場合は、cDNAを作製したら、あとで別の遺伝子の発現見たくなったとしても、プライマーだけ注文して、リアルタイムPCRを行えば良いだけである。

一方、ノーザンブロットの場合は、全ての操作をしなければならない。

また、ノーザンブロットはRNAを保存するのに対し、リアルタイムPCRはcDNAを保存する。RNAは劣化しやすいので、また再度取り直さなければならない。

さらに1つの遺伝子の発現を見るのに、ノーザンブロットでは数マイクログラムのRNAが必要だが、リアルタイムPCRの場合は数マイクログラムのRNAでcDNAを合成すれば、おそらく数十遺伝子の発現を見ることができる。

ということで、圧倒的なスループットの違いから、うちの研究室でもリアルタイムPCRになっている。

もちろん、実際に転写産物の長さを見たいときなどには、ノーザンブロットもまだまだ必要とされる。正直、リアルタイムPCRだと波形データなので、本当に大丈夫かと不安になるときもある。

このように、時代とともに実験手法は移り変わっていく。たくさんノーザンブロットをやっていた時が懐かしい限りである。

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