2021年8月26日木曜日

教科書と逆?酵素からわかる生物の仕組み

 一昨日の大学HP

ラン藻におけるクエン酸蓄積の要因を解明


M1西井さんの論文が、Scientific Reportsにアクセプトになり、公開された。その日本語記事。


ラン藻(シアノバクテリア)の中で最もよく使われるSynechocystis sp. PCC 6803(シネコシスティス)という種の酵素についての解析。


酵素は、アコニターゼ


酵素名は聞いたことがないかもしれないが、クエン酸からイソクエン酸を作る酵素である。この反応は、高校の生物でクエン酸回路(TCA回路、クレブス回路)として出てくる。なので、生物と名前がつく科目を取ったことがあれば、高校生、大学生は絶対に知っている反応である。



それで、ラン藻のアコニターゼの活性を調べたところ・・・


クエン酸からイソクエン酸を作ることもできるが、イソクエン酸からクエン酸を作る活性の方が強かった。


なにそれ、教科書と逆・・・


なんでそんな酵素を持っているのだろうか?という話。


1つ目の議論は、そんな酵素だったら、クエン酸回路が回らないのでは?について。これについては、クエン酸回路の次の酵素が強いので、イソクエン酸をどんどん奪ってくれるために進むのだろうと議論している。生成物が減れば化学平衡が傾くということである。


2つ目の議論は、なぜクエン酸を作る方向に向いているかにいついて。これは、クエン酸そのものの機能が大事だから。


クエン酸は、金属をキレートすることができる。キレートとは何かというと、要するに捕まえておくことである。


金属は細胞に必須だが、時として毒にもなる。特に酸素があると、活性酸素の発生源となり、大きな毒となる。


これは生物共通の話だが、ラン藻は光合成をする生物。すなわち、自ら酸素を作っている。なので、金属は、なおさら毒になるのである。


このため、クエン酸をきっちり貯めておいて、金属をしっかり捕まえているのではないかと予想している。このために、アコニターゼがクエン酸を貯める方向になっているのではと考えている。


このように、生物はとてもエレガントで論理的にできている。また、それぞれの生物に適した形になっている。酵素の解析からも生物の生き様が見えてくるのである。


ということで、論文完了。1つの論文を作るのは本当に大変。でも、とてもおめでたいことである。。





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