最近はなくなってきたが、一時期パーマネント(無期雇用)の研究者の募集では、「海外での研究経験があること」などの要件がある場合があった。
海外での研究経験が必須であり、一度は若手研究者も海外にいきましょうということである。
・・・正直、時代錯誤だと思う。
その昔は、欧米が進んでいたし、情報が入りにくかった。だから海外(というか欧米)に行って研究して学んでくるものだった。とても理にかなっている。
しかし、いつしか手段が目的化して、海外に行くことが大事となってしまった。
もちろん、それは良い体験になるとは思うが、必ずしもみんなが行けるわけでもない。
持病がある人もいると思う。うちのように家庭を持って、かつ子供が結構なアレルギー持ちだったら、正直厳しい(子育てをしない人に限って、海外だってアレルギー対応はあるというが、アレルギーとは食品を避ければ終わりではない・・)。
また、晩婚化・少子化に伴い、介護などをしなければならないケースもある。
さらに、海外に行って稼ぐとは言っても、やはり最初はお金が必要な場合も多い。
こうして、ただでさえ任期付きのポジションばかりなのに、さらに若者にハードルを課していったため、博士課程に進む人たちが激減してしまったのではないかと思う。
上には事情がある場合を書いたけれど、別に地元が好きで地元で暮らしながら研究をしたいという理由だって良いと思う。論文などはネットで読めるし、研究環境はあるものでできますとなれば、別にそれで良いと思う。人的交流は学会や研究会にいけばいいだろうし。
繰り返すけれど、海外での経験はきっと役には立つと思う。しかし、それは研究の本質ではない。情報が手に入りやすい現代と昔の体験を同列にすべきではない。
ノーベル賞の益川教授や田中耕一さんのように日本で成果を挙げた人の例を恣意的に無視し、日本から飛び出した利根川教授や中村修二教授などの例を挙げるのも正しくない。
何が言いたいかというと、もう上から目線で若者に次々とハードルを課す時代は終わったと思う。
放っておいてもアカデミックの研究者が溢れる時代は終わり、博士課程に進んでいただく時代だと思っている。
甘いと言えば甘いかもしれない。なので、それは大学院や研究室の方針によると思うので、それぞれ違って良いと思う。
自分としては、博士課程の学生を徹底して優遇する時代で、その後のキャリアパスを一緒に、柔軟に考えることが大事だと思っている。
うちの学生は来年から博士課程が2名になるが、2人とも学振DC1。すなわち給料が月20万円。そして、学振に採用されたので、学費が全額免除。このくらいの待遇でなければ博士課程には誘いにくくなっている。
海外経験の問題だけでなく、そろそろ若者に対する意識を変えないと、本当にアカデミックの世界も沈んでしまうと思っている。すでに沈んでいると思う人もいるかもしれないが、自分はまだ全然手遅れではないと信じている。
若者はこうあるべき・・・みたいなものをもう減らす時代ではないだろうか・・・
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