2020年11月3日火曜日

基礎研究は役に立つのでお金をくれますか?

SNSをみていると、毎日のように基礎研究にもっと予算をという話を見かける。自分は大学の人間なので賛成なのだけれど、毎日のように見せられると、周りの人たちからうんざりされないかはかなり心配である。


主張をすることは大事かもしれないが、それに乗じて誰かを罵倒したり、単なる愚痴だったりすることもある。うまく主張して欲しいなと思っている(自分もそうせねば・・)。


基礎研究に予算をという意見で、最も多い主張は「すぐに役立たなくても、遠い未来に役立つ」というものである。自分の場合は、遠くなくても役立つと思っているけれど。




なので、この意見にまったく反対はないのだが、上記の通り言い方は大事だと思っている。


また、他にも2つほど気になることがある。


1つは、他の分野に比べてより投資をすべきという主張ができているか?ということである。


いつも書いている気がするけれど、幼児教育、小学校〜高校教育、医療、福祉、防災など、予算を投入すべきところは無数にある。いや、デフレの日本なのだから、予算はどこにでも投入すべきだと思うが・・・こういう分野を差し置いて優先させるのか、それともあらゆる分野に予算を投入するのかがよくわからない。自分の分野が大事だからもっとというだけだと、まあ、みんなそう言っていると思う。上記同様、もう少しうまく主張をしなければと思う。


また、2つ目は、そもそも応用研究とか馬鹿にしていませんでしたっけ?という点である。


自分の実体験からだけれど


○応用研究をしようとすると、だいたいつまらないとか科学ではないとか、金のことを考えるなとか言われる。

○応用とか実用化とかいう割に、知財のことを考えずに、論文のインパクトファクター競争ばかり考えている。

○ところが、欧米が始めたり、国の予算がつくとなったら、掌を返したように、応用研究とか役立つとか言い出す。


というのが挙げられる。そう、応用研究とか実用化は、嫌われるアカデミア集団からは徹底的に嫌われてきた。自分は進路のポジション取りがめちゃくちゃうまかったので、基礎特研やらさきがけやらその他の予算を背負って、そういうのを後押ししてくれる集団にうまく移っていった。しかし、みんながそんな器用なことをするのは不可能だと思う。


最近多様性とかダイバーシティとかいう言葉がいろんな分野に使われているけれど、応用を認めるダイバーシティは、それほどアカデミアにはないと感じている。予算がつくと急に応用とか言い出す人がどれほどいることか・・・


要因として大きいのは、集団を率いるボスのパーソナリティであると感じている。学会でも研究会でももう少し小さい単位でも、その集団を率いる人の性格・性質によるところが大きい。なので、本当の意味でダイバーシティを認める人たちのところにいるのが良いと思う(それにしても自分はうまく渡ってきたものだと思うけれど)。


ただし、ダイバーシティをたまに誤用して、なんでもいいから認めろ、認めないのは多様性を認めていない、研究してないけれど他のことをしているから認めろなどとなってしまうこともある。この辺はリーダーの評価基準によることだと思う。


いずれにせよ、基礎研究は役に立つなんて主張をしていても、全然考えないどころか邪魔すらする人たちもいる。そうしたことを続けてきておいて、お金取りの時だけ役立つというのはちょっとと思うが。まあ、そう言いながらも、我が身を正さないといけないなと思っている。








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