2017年12月1日金曜日

RNAポリメラーゼシグマ因子とは?

大学院生のころから研究しているのが、RNAポリメラーゼシグマ因子というタンパク質である。

RNAポリメラーゼは、分子生物学の授業で大学生は必ず習うタンパク質である。

一部のウイルスを除くすべての生物は、DNA(デオキシリボ核酸)を遺伝子としている。DNAの4つの塩基(GATC)に生命の情報が記載されているのである。

遺伝子はDNAから構成されているが、生命の設計図たるDNAを毎回細胞内のいろいろなところに持っていくわけにはいかない。細胞は、DNAを一旦コピーして、使う場所に持っていくのである。

DNAの情報は、RNA(リボ核酸)という物質にコピーされる。このRNAを合成するプロセスを転写(transcription)と呼ぶ。日本語の転写はコピーに写し取るという意味でも使われるが、とてもわかりやすい日本語になっている。

このDNAからRNAに転写する際に、必要な酵素(タンパク質)がRNAポリメラーゼである。ということで、すべての生物にとって、RNAポリメラーゼは必須のタンパク質である。

RNAポリメラーゼは、原核生物と真核生物で構成が異なる。真核生物はシングルサブユニット型、原核生物はマルチサブユニット型である。シングルサブユニット型とは何かというと1つのタンパク質から構成されており、マルチサブユニット型は複数のタンパク質から構成されているということである。

真核生物の場合は、1つのサブユニットからなるが、たくさんの基本転写因子というタンパク質群が転写には必要になる。この基本転写因子がたくさんあるため、「転写って複雑で難しい!」という印象を与えることがある(私もぜんぜん覚えていないので、必要な時に教科書を見れば十分だと思う。。)。

原核生物の場合は、RNAポリメラーゼは複数のタンパク質からなる。RNAの合成を行うタンパク質は、コア酵素と呼ばれ、α、β、β'、ωの4種類からなる。ωは必須ではないので3種類と書いてある場合も多い。このコア酵素にσ因子(シグマ因子)が結合して、RNAポリメラーゼが完成する。すべてのタンパク質を合わせてホロ酵素と呼ぶ。

シグマ因子の役割は、RNAポリメラーゼとDNAを結合させることである。DNAから情報を読み取り、RNAを合成するので、当然ながらRNAポリメラーゼがDNAに結合する必要がある。この役割を担うのがシグマ因子である。RNAポリメラーゼが結合する部分のDNAをプロモーターと呼ぶ。

そして、RNAポリメラーゼがDNAに結合したのち、転写が開始する。この転写を開始させるのもシグマ因子の役割である。転写開始後は、シグマ因子は外れて、コア酵素だけで進んでいき、RNAが合成されていく。

シグマ因子は1つだけではなく、細胞の中には複数のシグマ因子があるのが一般的である。細菌の遺伝子は、一般的に数千の単位で存在する。どの遺伝子をどのくらい転写するかを決定するのに、シグマ因子が重要なのである。

環境バイオテクノロジー研究室では、光合成原核生物であるシアノバクテリアのSigEというシグマ因子を改変することで遺伝子の転写を改変し、それによってポリヒドロキシ酪酸やコハク酸というプラスチック原料の増産を行っている。

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