2017年12月12日火曜日

窒素グローバルレギュレーターNtcAを用いた代謝の改変

"Metabolomic analysis reveals rewiring of Synechocystis sp. PCC 6803 primary metabolism by ntcA overexpression."

Osanai T, Oikawa A, Iijima H, Kuwahara A, Asayama M, Tanaka K, Ikeuchi M, Saito K, Hirai MY.

Environ Microbiol. 2014 Oct;16:3304-17. 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25039649

NtcAは、Nitrogen controlという言葉に由来するタンパク質であり、窒素の栄養状態を感知して遺伝子発現を制御する転写制御因子である。正確に言うと転写因子であり、RNAポリメラーゼによる転写を正または負に制御する。

NtcAの制御下には、窒素源の取り込みに関するトランスポーター遺伝子や窒素同化を行うグルタミンシンセターゼ遺伝子がある。要するに、窒素に関連する遺伝子がNtcAの制御下にある。

また、炭素同化を担うルビスコ遺伝子や光合成遺伝子もNtcAの制御下にある。さらにこれまで研究してきたSigEやRre37もNtcAの制御下である。これらの遺伝子は、直接的または間接的にNtcAによって、窒素欠乏時に遺伝子発現が変化するのである。このことから、NtcAはシアノバクテリアにおける窒素のグローバルレギュレーターであると言われている。

NtcAタンパク質には直接2-オキソグルタル酸(α-ケトグルタル酸)が結合する。2-オキソグルタル酸は、シアノバクテリアでは窒素の栄養状態を示す代謝産物として知られている。窒素欠乏時に2-オキソグルタル酸が蓄積し、これがシグナルとなってNtcAなどを活性化し、細胞の遺伝子発現を変化させることが知られている。NtcAは転写因子としてだけでなく、シグナルのセンサーとしても働いているということである。

このように、窒素のシグナル伝達の上流に位置するNtcAを改変すれば、代謝も大きく変わるだろうというのがコンセプトである。特に糖異化酵素遺伝子の正の制御因子であるSigEやRre37の上流にあるので、糖異化が促進するはずであるということである。ということで、NtcA過剰発現株を構築し、トランスクリプトーム解析やメタボローム解析を行った。

ところが、予想とは少し異なり、グリコーゲン量は減ったが、糖異化酵素はあまり増えていなかった。マイクロアレイを行ったが、それほどはっきりとしたグループの酵素遺伝子が変化したわけではなかった。窒素同化酵素や繊毛の遺伝子、TCA回路の酵素などは変化していたRre37のmRNA量やタンパク質量は増加していた。

また、NtcA過剰発現株では増殖が促進することや、フェニルアラニンやリジンなどのアミノ酸が増加することがわかった。転写制御因子を変えると代謝が変わった例はこれで3つ目となり、やはり転写制御因子の遺伝子改変は代謝工学に有効であることがここでも示されたのである。


このように、NtcAという窒素のグローバルレギュレーターを過剰発現することで、糖代謝やアミノ酸代謝を改変することには成功した。ただし、予想とはだいぶ異なる変化であり、転写制御因子を改変すると、代謝は大きく変化するものの、まだまだオンデマンドの変化を起こさせるには程遠いことも明らかになった。

0 件のコメント:

コメントを投稿