2017年12月14日木曜日

ヒスチジンキナーゼによる糖・アミノ酸代謝の改変

"Alteration of cyanobacterial sugar and amino acid metabolism by overexpression hik8, encoding a KaiC-associated histidine kinase."

Osanai T, Shirai T, Iijima H, Kuwahara A, Suzuki I, Kondo A, Hirai MY.

Environ. Microbiol. 2015, 17:2430-40.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25403325

ヒスチジンキナーゼとは、二成分制御系を構成するタンパク質の1つである。二成分制御系とは、ヒスチジンキナーゼとレスポンスレギュレーターの2つのタンパク質からなるシグナル伝達の形である。細菌に広く保存されるシグナルであるが、酵母や植物にも保存されている(農学部農芸化学科では、3、4年生の生命システム工学の講義で登場する)。

ヒスチジンキナーゼは様々なシグナルの伝達を行う。ヒスチジンキナーゼは、浸透圧や塩、窒素、リン、光強度など情報を感知して、下流のレスポンスレギュレーターに伝達するタンパク質である。

Hik8は、Synechococcus sp. PCC 7942という別のシアノバクテリアでSasAという名前がつけられているタンパク質のオーソログである。SasAは、時計タンパク質であるKaiCと相互作用し、概日リズム(サーカディアンリズム)の情報を伝達して細胞内の遺伝子を制御するタンパク質である。



SynechocystisでのHik8の働きはまだわかっていないが、本論文でKaiC1とのin vivoでの相互作用が確認されたため、SynechococcusのSasAと類似の働きをしていると考えられるが、詳しいことはわからない。

本論文でHik8の過剰発現株を構築したところ、グリコーゲンや糖リン酸などの代謝産物が減少することがわかった。グリシンやスレオニンなど、一部に増加するアミノ酸もあったが、どちらかというと減少する代謝産物が多かった。

また、RNAポリメラーゼシグマ因子SigEは、明条件から暗条件に移行すると分解していくのであるが、Hik8過剰発現株では分解されなかった。このことから、Hik8過剰発現株ではSigEを介して間接的に糖異化が変化していることが示唆された。

このように、Hik8という二成分制御系ヒスチジンキナーゼを使っても代謝が改変できるということを示したのがこの論文である。ただし、分子メカニズムの解明という点では非常に甘い内容である。KaiC1という時計タンパク質とHik8がin vivoで相互作用することを示したが、それ以外のシグナル伝達経路については解けた訳ではない。

シアノバクテリアの時計タンパク質の基礎研究は、世界的に有名なグループが非常に精力的に研究をしている。その流れの端っこに乗っても仕方ないので、あくまで代謝工学的な利用をメインに当研究室では研究を進めている。

また、どのように代謝が変化するかはまだまだ出たとこ勝負であるので、予想をすることが難しい。ヒスチジンキナーゼを用いた代謝工学の論文が今後蓄積することによって、狙い通りに代謝を制御できるようになるとよいのであるが、まだまだ先の話であると思っている。

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