藻類でいきなりシアノバクテリアと言ってもあまりピンとこない人が多い(正確にはバクテリアなので藻類と呼んではいけないのであるが)。熱帯魚好きの人や漁業関係者ならばシアノバクテリアやアオコが増殖して困ることがあるかもしれないが、一般の人は知らないだろう。藻類といえば、昆布やワカメ、ノリなどの大型藻類を思い浮かべると思う。
そんな中、実は意外に身近にあるのがシアノバクテリアの一種であるスピルリナである。英語ではSpirulinaであるが、学名はArthrospira platensisであり、Spirulinaとは異なるのでわかりにくい。
スピルリナは、塩濃度の高い湖に生息しており、アフリカでは食用に用いられてきた。すなわち、スピルリナは食品なのである。研究レベルでは、抗酸化性・抗ウイルス性などがあるとされているが、医薬品とはなっていない。
スピルリナという名前は、その形態がらせん構造を取っていることに由来する。高塩濃度、高pHで生息することができる特殊なシアノバクテリアである。
近年、国立環境研のスピルリナ株の1つであるArthrospira platensis NIES-39のゲノムが解読されて、基礎研究も進んではいる。ただし、遺伝子の改変ができないため、培養技術や物質生産の研究などに限定されてしまうところが残念なところである。
スピルリナは工業的に培養されているシアノバクテリアである。スピルリナは食品として用いられるだけでなく、色素を抽出するために培養されている。スピルリナからは食用の色素タンパク質であるフィコシアニンが取れる。これは光合成に使われる色素で、非常に綺麗な青色をしている。
天然の色素タンパク質であるので、食べても害はない。それどころが、論文レベルでは体に良い効果の報告もある(※臨床試験ではない)。
環境バイオテクノロジー研究室が発足し、私が明治大学に着任したため、農芸化学科の学生は2年前からこのスピルリナの色素フィコシアニンを使った学生実習を行うことになっている。スピルリナからフィコシアニンを抽出するのが実験の始まりである。実習は、分光光度計や硫安沈殿、BCAタンパク質定量、SDS-PAGE、ブロッティングを行う実験ではあるのだが、実験手法だけではなく、自分で何をやっているか考察してもらうことになっている。
形態を観察するだけでも面白いスピルリナであるが、実は食品や化学品、そして学生実習という教育面まで、非常に幅広く応用の聞く生物なのである。
0 件のコメント:
コメントを投稿