"Seawater cultivation of freshwater cyanobacterium Synechocystis sp. PCC 6803 drastically alters amino acid composition and glycogen metabolism."
Iijima H, Nakaya Y, Kuwahara A, Hirai MY, Osanai T.
Front. Microbiol. 2015, 6:326.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25954257
この辺りの論文から、筆頭著者だけでなくラストオーサー(って日本語訳あるのだろうか。最終著者?)兼責任著者(corresponding auther)の論文が増えてくる。
理化学研究所の時もそうであるが、明治大学農学部農芸化学科環境バイオテクノロジー研究室においても、シアノバクテリアを用いたバイオプラスチック・バイオエネルギー生産の研究を行っている。
普段は遺伝子改変などでポリヒドロキシ酪酸(PHB)やコハク酸、乳酸、水素などの増産を行っている。
しかし、これらは応用へ向けた一部に過ぎない。
実際には原材料となる培地を調達して、培養設備を整えて藻類を育てて有用物質を生産し、さらにそれらを回収・精製して・・・・など、応用に向けては実に様々なステップがある。これらをすべて考えていかなければならないのである。
そんな中で、微細藻類のネックに1つといえば、淡水を培養に使うことである。日本では豊富な淡水であるが、世界的に淡水は貴重な資源である。そんな貴重な淡水を無尽蔵にプラスチック生産に使うわけにはいかない。
そこで望まれるのが海水の利用である。
この論文で行ったことは極めて単純である。単細胞性のシアノバクテリアであるSynechocystis sp. PCC 6803を海水で培養したのである。海水の成分としては、窒素とリンが足りなかったので、海水に窒素とリンを加えたらシネコシスティスが育ったという極めて単純なものである。
シアノバクテリアは、藻類の中では比較的高塩濃度に強いことは知られている。海水の塩濃度と比べてみると、淡水性であるシネコシスティスも問題なく育ちそうだったので試してみたのである。なんとも単純な研究だが、全然研究されていないのである。
この論文では、さらにバッファーでpHを制御するとより増殖することや、海水で培養すると合成培地で培養するよりもなぜかオルニチンやリジン、プロリンなどが5倍以上に増えるというデータも示した。なぜアミノ酸が変化するのかは明らかになっていない。単純に塩濃度の性ではないというデータも出ている。
また、細胞のサイズも海水で培養すると変化した。全体的に大きくなるとともに、細胞のサイズの分布が広くなる傾向にあった。メカニズムなどはわかっていない。
この論文は結構注目が集まり、3つの新聞で紹介された。海水で微細藻類が培養できるというわかりやすさも手伝ったと思う。こういうコロンブスの卵的な研究をこれからも行っていきたいと考えている。
0 件のコメント:
コメントを投稿