2020年1月25日土曜日

オーサーシップで思い出した。卒研のラボに進学しなかった理由。

論文のオーサーシップが話題になっていたので、思い出した。自分の過去の研究室選びについての話。

オーサーシップとは、要するに誰が論文の著者になるかであり、特に、複数著者がいる場合に誰が筆頭著者、責任書者になるかという話である。



実験している人が筆頭著者で、研究室の所属長が責任著者であるというのが一般的。うちのように、教員が一人しかいない研究室だと割と分かりやすい。

一方、ビッグラボだと話はそう単純にはいかない。大人数のところだと、教授、准教授、講師、助教とチームが分かれ、研究内容がかなり違うことも多い。そのような場合、責任著者は教授なのか、それとも実質的なボスである人間(准教授、講師、助教)なのかは、その研究室によると思う。

また、筆頭著者もしばしば揉める。1つのテーマを1人の人が完結できれば、そのまま筆頭になって終わりであり、単純である。しかし、1つのテーマに複数人が関わると話が難しくなる。筆頭著者とそれ以外の著者では、評価が天と地ほども違う(分野による)。誰が筆頭著者になるかは、本人の将来にも関わる非常に重要な問題である。

オーサーシップが話し合いで決まれば問題ないが、不満に思う場合もあるかもしれない。

非常によくあるケースで問題なのが、せっかく実験をしたのに、筆頭著者を上の人間に取られてしまうことである。就職が決まっていて別に論文はいらないケースや、どう考えても研究を完遂できないケースならば仕方がない。しかし、本人が筆頭著者論文を書きたがっているのに、筆頭著者になれないこともある。特に大きい研究室だと起こりがちである。

自分の場合も、学部4年生の卒業研究で外研に出ていて、某大きな研究所の大きな研究室にいた。研究室全体の問題ではないが、自分の所属したチームは、みんなで1つの遺伝子の研究をしていた。4年生なので大した研究ができたわけでもないが、チーム構成や研究の進め方を見ていると、どう考えても完全に分業制だった。それぞれが論文を書くようなアクティブさもなかったし、このまま進んでも筆頭著者として論文を書かせてもらえないような状況だった。実際、同期の4年生は、抗体づくりをしていたが、抗体ができたらその抗体を先輩が勝手に使ってデータを取っていた。自分のデータも、何年か後に無許可で学会発表されていた(論文レベルのデータではないからいいのだけれど)。

4年生だったのでその当時はきちんとはわからなかったが、これはやばそうだと感じて、大学院は別のところへ。その後のチームの行方を見ても、自分としてはかなりよい選択をした。そのまま進んでいたら、研究者の道は完全にアウトだった。

自分がそういう経験をしたので、自分の研究室でもオーサーシップには気をつけていて、原則は一人一テーマで揉めないようにしている。ただし、単純にそうすると、特に学部就職では、論文まで達しないことも多い。時間が足りないのもあるが、就活が終わって燃え尽きてしまい、研究モードに戻れないことも多々ある。オーサーシップも何も、論文にならなければ仕方がない。そうした場合には複数の筆頭著者だったり、次の人に引き継いで、筆頭にはならないこともある。この辺りは現実路線と言えるかもしれない。

オーサーシップの決定は、研究室のボスの仕事。何にせよ、きちんと話し合わなければいけない。ただし、下の人間が面と向かって上に言うのはかなり大変だと思う。「そんなの話し合えばいいじゃん」というのは正しいとは思うけれど、うーん、なんとも言えない。甘やかしとも思うけれど、下の学年ならばできないことも多いと思う。

自分が筆頭著者になりたいのになれなそうな場合、第1選択は感情的にならないように自分の希望を伝えることであるのは、間違いないと思う。ただ、それでも聞く耳を持たなそうな場合があるのは、自分も経験している。そうした時は、研究室をうつらざるを得ないかもしれない。

研究室配属時期でもあるので学生たちに伝えているが、研究室のHPを見て、筆頭著者が誰になっているかを調べることはとても重要だと思う大学院生が誰一人筆頭著者になっていなければ、上記のようなケースかもしれない。筆頭著者が博士課程以上の人ばかりならば、自分も修士課程では論文を書けない確率が高い。

最近は、色々と情報が得られるので、ぜひしっかりと情報を集めて、研究室選びをしてもらいたいと考えている。研究室選びで全てが決まるわけではないが、やはり差はつくものなので、自分に合った選択をして欲しいと思っている。

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