Arisaka S, Sukigara H, Osanai T. J Biosci Bioeng. 2018 Aug;126(2):139-144. doi: 10.1016/j.jbiosc.2018.02.005.
またもやしばらくサボっていた論文アーカイブス(論文紹介)・・。書くのにエネルギーが必要なもので・・。久しぶりに書こう。
こちらはM2有坂さんの研究。
転写因子であるRpaAの過剰発現によるシアノバクテリアの光合成改変の論文。
RpaAという転写因子は、シアノバクテリアでは結構な有名タンパク質。シアノバクテリアでは、サーカディアンリズムを生み出す時計タンパク質KaiABCというものが知られている。このKaiABCが24時間の概日リズムを生み出す。
この時計からのシグナルを受け取り、遺伝子の転写を制御するタンパク質がRpaAである。RpaAはレスポンスレギュレーターと呼ばれる転写因子の1つである。なので、時計関連の転写因子と言える。
また、時計だけでなく、光シグナルも伝達することが知られている。光合成生物に大事な時計と光に関与するとても大事なタンパク質である。
今回の論文では、このrpaAを単細胞性のシアノバクテリアであるシネコシティス細胞内で過剰発現(タンパク質量をふやすこと)させた。
そうすると、光合成に関連するパラメーターであるFv/Fm, Fv'/Fm', qP, ΦIIなどが減少することがわかった。すごくざっくり言うと、光化学系IIの活性が下がり、光合成電子伝達全体の活性が下がったと言える。
一方で、光合成の本体(PSII, PSI)の遺伝子発現を調べたところ、これらの遺伝子発現は変化しなかった。
ということで、どこが鍵となって光合成が変化したかはわかっていない。
その前の論文で、rpaA過剰発現によって糖やアミノ酸代謝が大きく変わることを明らかにしているので、そちらの影響が大きいのかもしれない。
なので、クリアなことは言えないが、光合成を変化させるということはできた。現在、世界中の研究者が光合成を改変しようとしている。しかし、光合成はあまりにも複雑なため、光合成活性を落とすことはできても、上げることはそう簡単にはできない。今回のような知見を地道に積み上げていくことで、いつの日か光合成の活性を自由に操作できるようなことができれば良いと考えている。
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