2018年10月22日月曜日

ポスドク問題の解決法ってあるのか?No.7

ポスドク問題の解決法ってあるのか?No. 7である。

ポスドク問題とは、博士研究員(ポスドク)、さらには技術員(テクニカルスタッフ、テクスタ)、派遣職員、パートタイマーなどの不安定な雇用のことである。

その3は副業の話で、この業界は仕事は楽しいので、要するに稼げてしまえば問題解決である というマインドで話している。まあ、そんなことが簡単にできたら苦労しないのだけれど・・・

文章を書いてお小遣い稼ぎはできるかもしれないというのが前回の話。

では他には何かあるだろうか?

副業といっても研究で忙しい。副業で時間や労力を使ってしまったら元も子もない。本末転倒である。なるべく本業を邪魔しないものがよい。

本業と直結するものとしては、特許がある。研究で得られた新しい技術や製品で特許を取るのは、研究の一環でもある。

では特許で稼げるのかという話だけれど・・・・

とても凄い成功例を除くと、やはりお小遣いくらいかもしれない。でも、研究には必要なので仕組みを。

勘違いしている人が多い点として、特許出願でお金がもらえることが挙げられる。特許で大金持ち!なんてイメージが先行しているが、実際にはいろんなステップがある。

新しい技術や製品が生まれたら、まずは特許出願をする。明細書という難解な言葉で書かれた資料を作成しなければならない。この仕事は弁理士に頼むことが多いと思う。頑張って自分で書いている人もいるかもしれないが(正直、なぜあのような難解な言葉を使わなければいけないのか、理解ができないが)。

この特許の資料は特許明細書、あるいは単に明細書と呼ばれている。

これを作成して、特許庁に出願する。さらっと「作成して」といったが、弁理士に自分のデータを説明し、図表も作らなければならない。なかなか大変。2、3ヶ月はかかる。

これが終わると、特許事務所から特許出願をしてもらう。これにより、特許出願が成立する。特願2018-XXという番号がつく。これが特許出願である。正確には、日本国内への特許出願である。

ここで勘違いしているのが、これは特許出願であって、まだ特許を取得したわけではない。このシステムはややこしくて、自分もよくわからないが。

特許を出願した後は、1年間の追加出願が可能である。ようするに新しい技術ができたときに、内容を追加することができる。

ただし、出願をお願いするにも、追加にもお金がかかる。大学や研究機関の予算、研究費などで支払うことになる。

特許出願のあとはどうするかというと、外国へも出願するかどうかを決める。外国へは個別にもできるが、PCT出願といって、特許に関する条約に加盟している国々に、まとめて出願するのが一般的である。こちらも弁理士に明細書を作成してもらう。

当然だが、ここでも明細書の作成費用とPCT出願の費用がかかる。

さらにこれが1年くらいすると、特許の登録をするかどうかの判断になる。各国移行とも言って、ようするに、日本やその他の国で特許を取るかどうかという話になる。一般のイメージで言う「特許を取る」というのは、これが成立したときのことである。

特許の登録は、1つ1つの国で行う。当然、翻訳が必要である。弁理士などにも頼むことになるが、英語のチェックは必要になる。

この資料が準備できたら、それぞれの国の特許庁に申請をする。

しかし、まだこれでは通らない。

なんと半年〜1年半も審査に時間がかかる。

そして、すぐに通るわけではなく、審査なので、「この部分は新規性がない」「この部分は削れ」などの要求がくる。これに反論することになる。論文のバトルに似ている。

これが終わって、晴れて特許登録となる。人によると思うが、自分の場合は、特許出願からだいたい4、5年後にやっと特許登録となる。もう、いつのデータだよ・・・レベルである。

副業の話だったが、どこでお金が入るかというと・・・・ここまでの話では、本来は1円もお金は入らない。むしろ払う一方である。

ただし、大学や研究機関が、「特許出願するとXX円」、「特許登録するとXX円」とインセンティブをつけていることがある。これで少し収入になる。

本物の特許収入としては、特許が登録に至り、ライセンス契約をしてくれたり、権利を買ってくれて、やっと収入になる。

基礎研究をしているとなかなか難しいかもしれないが・・。

とはいえ、分子生物学や生化学を基盤としている自分でも、一部権利を買ってもらったこともなる。給料ほどにはならないが、お小遣い程度が単発でくることもある。

時間がとても長くかかるが、研究の一部でもあるし、知的財産でもあるので特許はおすすめである。ただし、労力は結構かかる。

No.8に続く。

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