欧米のワクチンに加え、WHOは中国のワクチンを承認すべきとの勧告を出した。
効き目はやや劣るようではあるけれど、ワクチンが行き渡らない現状では使うべきとの判断である。
一方、日本発のワクチンはなし。大阪で昨年できるはずだったらしいが、まあできるわけもない。できない挙句に、イソジンが効くとか、実は日本人はファクターXがあるので大丈夫とかめちゃくちゃな理論に逃げていた。
思えば、約10年前、当時理化学研究所に在籍していたが、このような日本の科学の衰退は、すでにはじまっていたのかもしれない。
事業仕分けが流行った時にである。
テレビに政治家が映り、官僚を問い詰めてすっきりするものである。あえて中身を言わないのは、単になんとなくすっきりするためのものだったからである。
そして、科学技術はこれが直撃。2番じゃダメなんですか?は有名になったけれど、他にもなんとなく1/3予算カットなどだった。無駄を削るのは全く間違いではないけれど、なんとなく予算カットは一番の悪手だった。
なぜって、こうすると一番弱い現場から予算が削減されるので。実際、これによって明らかに研究の現場の力が削減された。ところが驚くべきことに、無駄がなくなったなんていう話は一切聞かない。追い討ちをかけるように、自分たちの必要性を訴えかけるという謎の業務が増え、さらに研究現場が疲弊していった。
そして、こうした不安定さをみて、科学の道に進む人が減るという悪循環にもなった。約10年前のことである。
そして今、ワクチンが作れない国、行き渡らない国として証明されてしまった。
PCRとかリアルタイムPCR、逆転写、アミノ酸変異とか、普段だったらなんの役に立つんですか?と真っ先に言われる分子生物学の知識が、連日ニュースで取り上げられ、電車に乗っても広告すら出る時代になった。
本当にうまく無駄を削減して欲しかったが、無駄ではなく予算の削減だったので、研究現場が疲弊してしまった。基礎研究にひたすら投資してくれとは思わないが、こうしてたった10年後に人の命にすら関わってしまうとは、予想を越えた恐ろしさである。
こちらもなんとか抵抗して、企業などと組んで研究を進めている。それにしても、研究の継続がハードだなとは思っている。
ちなみに国や行政だけが悪いのではなく、研究者にも襟を正す点はいくらでもある。
基礎とか応用とかではなく、まったく研究していない人もたくさんいる。また、ライバル心から必死に他人の研究を無駄といって妨害している人もたくさんいる。こうした人たちが科学の発展を阻害している。なので、予算の問題だけではない。
これは直していかないといけないと思っているが、こうすると任期制ばかりになってしまうのが痛いところである・・。
パーマネントが頑張らないと、結局任期制が増えてしまうのである。というか、今任期制が増えたのは、パーマネントになって全然働かなかった人たちがたくさん出てしまったからとも言える(もはや20代、30代の人は知らないかもしれないが)。
過去は変えられないので、これを機に、科学技術立国を本当に目指してもらいたいと願っている。
災害大国日本が、一番「無駄」の重要性を知っているはずなのだけれど・・
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