2018年2月5日月曜日

理化学研究所(RIKEN)とは?No.1 〜捏造スキャンダルの影響〜

そういえば、先日理化学研究所に久しぶりに行ってきた。先月は横浜、今月は和光市の方に行ってきた。

3年前の2015年4月に着任する前は、理化学研究所に在籍していた。現在も客員研究員として、横浜の元の研究室である平井チームと和光の沼田チームに所属している。ということで、カードを持っているので、理研には自由に出入りすることができる。。

理化学研究所、通称理研は日本最大の基礎科学の研究所である。英語だと、Institute of Physical and Chemical Researchだが、最近はRIKENとそのまま書いていることの方が多い。海外でもRIKENで通用するくらい、その筋では知られている。文部科学省所管の独立行政法人である。



英語の名前の通り、もともと物理と化学が強い研究所であるが、最近は生物学はもちろんあらゆる分野で日本のトップを走る研究所である。

本部は埼玉県の和光市にある(上の写真)。この間新元素を発見してニホニウムと名付けられたので、上記のような記念碑が入り口にあった。

この他にも横浜、神戸や播磨、名古屋や仙台、鶴岡にもある。非常に大きい総合研究拠点である。

全部で3500名以上の研究者・技術者・事務員などが働いでおり、年間1000億円くらいの予算を費やす研究所である。
http://www.riken.jp/about/facts/

ひと昔前までは、研究界隈では知らない人はいなかったが、物を売る場所ではないので、一般の人はあまり知らなかったかもしれない。

ところが数年前の神戸研究所での捏造スキャンダルによって、良くも悪くも誰でも知っているようになってしまった理化学研究所である。

何回かに渡って、理化学研究所を紹介したいと思う。

ちなみに、いきなり脱線感はあるが、当時の捏造スキャンダルの影響について。

その当時は理研の横浜研究所に在籍していた。問題は神戸研究所であったので、全然関係ないのであるが、同じ理化学研究所での出来事である。理研にいた最後の1、2年の話である。

最初は「すごい発見が理研から!」と沸き立った。分野はだいぶ異なるが、よその研究会の人と話しても、「素晴らしい若手が現れて、理研は素晴らしい!」とみんな手放しで喜んでいた。

ところが事件以降、論文の取り下げや再実験、世間への対応など、大騒ぎになったのはご存知の通り。電車に乗ると中吊り広告で「理化学研究所の机や椅子が◯◯万円!」なんてたくさん載っていて、こんなに有名になるとはと驚いたものである。

イメージが悪くなるだけならまあいいのであるけれど、実害がかなりあったことはあまり知られていないと思う。

当時私は、科学技術振興機構から競争的資金、いわゆる研究費を獲得していた。競争的資金といえば日本学術振興会の科研費が有名である。

このような予算をとると、直接研究に使える直接経費とともに、研究機関に間接経費という予算が入る。なぜ研究機関に?と思うかもしれないが、予算を使うには各種手続きが必要だし、機器や物品、人件費などを使うには膨大な事務手続きが必要である。これらを賄うための予算である。

一方で、獲得する研究費が大きくなってくると、事務手続きだけで間接経費を費やすのは難しい。一般的な研究機関では、一部の間接経費を研究者に戻し(ポケットに入るわけではない!)、研究者はこの間接経費で研究のための補助物品、例えば実験室の棚とか椅子とかプリンタとかを購入するのである。

他にも旅費や汎用的な試薬や機器、人件費にも使えることがある。柔軟に対応できる大事な予算なのである。

研究費で買えばいいじゃないか?と思うかもれないが、このような汎用的な什器、オフィス機器は研究費(直接経費)で買えないことがほとんどである。なので、間接経費で研究環境を整えることが極めて重要なのである。

じゃあ、どれくらいの間接経費が戻ってくるか?これが研究者と研究機関でしばしばバトルになるのである。

もっとも研究者に優しい研究所・大学では50%程度の間接経費を研究者に戻してくれる。

研究費をたくさん取っているような研究所・大学だと10%程度しか戻してくれないところもある。理研もあまり戻してはくれない。「研究費をたくさん取っているでしょ」という余裕の現れとも言えなくもない。

そして、例の事件の時であるが、間接経費の戻りが0%であった。もちろん、その事件のせいだけではないようだが、0%は驚きであった。

上記の通り、間接経費は椅子や机を買うだけではない。場合によっては試薬・機器、人件費に費やされる。

ということで、この煽りで研究費が削られ、年度更新がなくなったり、新規採用を取りやめた人もいるはずである。事実、私ももし間接経費が一部戻ってきたら、パートタイマーなどを雇うつもりであった。こうして、見えないところで人件費すなわち雇用への悪影響もあった。

のっけからややネガディブな話になってしまったが、理化学研究所の紹介をしていきたいと思う。

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