H Iijima, T Shirai, M Okamoto, F Pinto, P Tamagnini, T Hasunuma, A Kondo, MY Hirai, T Osanai
Algal Research, 18:305-318.
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2211926416302247
こちらはコハク酸増産についての論文。単細胞性シアノバクテリアSynechocystisの話である。
コハク酸というバイオプラスチック原料が、暗・嫌気条件(すなわち発酵条件)でシネコシスティスの細胞外に放出されることが明らかになった。コハク酸量を増やす方法を探索するのが、当研究室のメインテーマの1つである。
暗・嫌気条件では、シネコシスティスは水素を生産することが知られている。水素は、次世代エネルギーとしても知られている物質である。過去には、RNAポリメラーゼシグマ因子SigEの過剰発現によって、水素の生産量を増加させるという論文も書いた。
コハク酸と水素はどちらも暗・嫌気条件で生産される。そして、どちらの物質も還元力(NAD(P)H)を生合成に必要とする。このことから、コハク酸生産と水素生産が競合している可能性が考えられた。そこで、水素生産を減少させれば、コハク酸生産が増えるのではないかと考えた。
シネコシスティスでは、水素はヒドロゲナーゼという酵素によって生産される。ヒドロゲナーゼはHoxEFHUYという5つのサブユニットからなることが知られている。このうち、活性に必須なHoxHの破壊株の作製を試みた。
しかし、完全破壊は致死的になるためか、hoxHの発現は完全にはなくならなかった。しかし、hoxHの発現が低下し、水素の生産量が低下したhoxH変異株が得られた。
このhoxH変異株を用いて、コハク酸などの有機酸の生産量を調べたところ、コハク酸と乳酸の量が増加し、酢酸の量が低下することが明らかになった。
また、hoxH変異株でトランスクリプトーム解析を行ったところ、糖異化遺伝子群の発現が増加していることがわかった。特にRNAポリメラーゼシグマ因子sigEの発現とSigEレギュロンの発現が増加していたことから、SigEのタンパク質量も調べたところ、hoxH変異によってSigEタンパク質量が増加することがわかった。SigEは糖異化を促進する因子であるので、このSigEタンパク質の増加も、コハク酸生産量が増加した一因の1つであると考えられる。
水素の合成酵素を改変するという少し変わった方法で、コハク酸の増産に成功したのである。
当該内容は、明治大学から特許出願も行っている。
http://www.conceptsengine.com/patent/application/2017070252
このように、環境バイオテクノロジー研究室では、バイオプラスチック原料などに関する特許出願や論文の発表を積極的に行っている。
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