2020年5月30日土曜日

生物の複雑さ。予想通りにはいかないのがバイオ。

自分は生物学の研究者。




生物学、いわゆるバイオ。バイオの難しさは、何と言っても予想通りにならないこと。生物は複雑である。

理論上では絶対にそうなる、絶対にそうならない、ということがあっさり起こりうる。なぜか考えても全然わからない。わからないことだけはわかる。

隠れた要因が無数にあって、予測することが不可能であるためである。

生物を扱っていない人ほど、理論上はこうなるはずなので・・・という言葉を使いたがる傾向がある。当たった時は大々的に宣伝するが、外れた時はひっそりと仮説を闇に葬る。TLのコロナウイルス感染者数の予測について発言している人たちを見ていても、外れた時には検査が足りないとか隠しているとか、そもそも外れたことに言及しないとかでやり過ごしている。

生物の実験をしていても、例えば簡遺伝子のクローニングを大腸菌で行うという最も簡単な実験ですら、うまくいかないことが多々ある。なぜか絶対にクローニングできなかったり、意地でもどこかに変異が入っていたり。

また、これまで見えていた表現型が、ある日突然消えることもある。

大学院生の時に経験したが、様々な解析をして再現性もとり、論文を書いていたら、ある日を境に全く結果が出なくなった。遺伝子改変株だったので、株をフリーズストックから起こし直したり、形質転換をしなおして株を作り直したりしたのだけれど、全然結果が出ない。

いまだにその原因はわからないが、当時の指導教官はバイオの先生だったので、「まあ、そういうことあるよね」という感じだった。ちょっとした初期値の変化(培養温度が一度ずれたとか、ストック試薬のせいで、培地の組成がほんの少し変わったとか・・)で結果が変わってしまうのが難しさである。

生物を扱っていないとわからない感覚かもしれない(それにしても論文を1本損して悔しかった・・・)。あれ以来、再現性には気をつけていて、再現性が悪くなりそうなテーマは早めに止めることにしている。

ということで、生物は本当に複雑で、理論上は・・・というのは、たまたま当たった時だけ喜ぶ程度のものであると思っている。

このような経験をしているので、最初のテーマを進めるか、それとも方向転換をするかについて、常に敏感にならなければと思っている。



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