2019年5月13日月曜日

研究予算とお金に色をつける難しさ

研究者なので、研究関連のフォロワーが多く、SNSには研究関連の話題がたくさん流れてくる。

研究において重大な問題は安定的な雇用の問題である。自分についても35歳で明治大学に着任するまで、任期制の研究者だった。

この頃は子育ての一番大変な時期とも重なっている。男性と言えども子育てで身動きが取れないことも多い。時間が自由にならず、研究以外のことに多大な労力を取られるのに、任期が迫っているので成果を挙げなければならない。ものすごいプレッシャーであったことを覚えている。

そのころにできた習慣が9〜10時に寝て、4時半起きるというものである。そして、4時半に起きて自分一人の時間を確保し、その1、2時間で研究(主に論文書き)を進めるというものであった。4時半ではなく、3時半に起きたりもしていた。このスタイルだと睡眠時間は確保されているので、慣れてしまえば辛くない。というか、むしろ早寝しているので体調はよかった。

その時の習慣で今も4時半に起きているが、今はもう少しのんびりしている。そもそもブログなんて書く余裕はなかった。。

明大の前は理化学研究所にいたので、研究所全体としての研究予算は豊富だった。しかし、現場にはなぜかそれほどの予算が流れてこない。自分は微細藻類を使ったバイオエネルギー・バイオマテリアル生産というセンターの方針に合った仕事をしていたが、基本的には外部資金で進めていた。お金はどこに消えているのだろう?といつも不思議だった。

いろんな無駄遣いはあるのだけれど、大きいものとしては、「予算の使い道が決まっていて、大型機器を買うことしかできない」というものだった。

大型機器、最新機器を導入するという名目でないと予算が降りず、そうすると見かけ上大きな予算を使っても、高額な機器が1台納入されて終わりである。数千万円とか1億円とかそういう機器がきてもランニングコストやメンテナンスコストはべらぼうに高いし、そもそも動かす人が必要である。そのため、満足に動かせないということも多かった。

不思議なのは、こうした無駄遣いや問題をみんなが認識しているのに、なかなか解決しない点である。上の問題は、理研内部でもみんなで頭を抱えていた。そして、こういうことをいうと、「文科省ガ〜!」みたいなセリフが続くかと思うかもしれない。しかし、文科省のキャリアの方に直接それを言ったことがある。そうしたら、「そんな決まりはないはずですが・・・」という趣旨で、とても非常に丁寧に答えていただいた。

なので、どこでこういう決まりが生まれてしまうのか、とても不思議なのである。

ここからは想像になってしまうが、その要因として考えられることは、昨今は外部だけでなく内部でも実質的な競争的資金が多いので、「予算をつける理由付けを(やりたくなくても)しなければならない」ことである。
「1億円で最新の質量分析で微量分析します」というのと、「ポスドクたくさん雇用して、これまでの研究を継続します」というのだと、前者が勝つ。「新企画」とか「最新の」とかをつけた方にどうしても予算が流れてしまうのである。実際には研究を継続した方が研究成果は挙がる。

要するに、お金には色をつけなければならないことが大きい。お金に色を付けるとは、お金を使う目的を明確にするということである。銀行員が融資をする時の鉄則でもあるので、お金を使う組織や人では例外なく、お金に色をつけることに直面する。

お金に色をつけずにたくさんお金を使うとクレームが来る。なので、これは◯◯用、あれは××用と周りからみて納得してもらえるように分けなければいけない。こうして予算が使いにくくなっていくのである。これはお金に関わるどのような組織でも同じであると思う。

こうした問題は研究現場だけではないので、とても難しいし、自分の専門外である。なので、どうしたら解決するのかはすぐにはわからない。少なくとも言えることは、予算を柔軟に使えるようにし、かつ、なるべく人件費に流れるようにするという色をつけることである(柔軟に使えるようにすることと色をつけることは、少し矛盾しているが)。

色々な予算は年々使いやすくはなっている。特に科研費とかJSTの予算は結構現場に配慮してくれている。こうした使いやすさが広がるように訴えて行かねばならないと思っている。もちろん、たくさんの研究成果を挙げることが最重要項目であることは言うまでもないが。

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