研究室で学ぶことについて、いつも「半分はサイエンス 、もう半分は一般的な仕事のやり方」という趣旨のことをいつも言っている。
サイエンスの部分は各研究室の内容で、うちでは分子生物学や生化学をメインに、酵素、遺伝子改変、代謝工学、光合成、バイオプラスチック原料生産などについての知識や技術を学ぶ。これは言うまでもない。
一方で、後半半分は、一般的な仕事のやり方を学ぶということである。
研究室ではいきなり自由度が上がる。自分で自分の時間や空間、労力の使い方を決めていかなければならない。自分の計画を考えて実行し、より効率的な方法を考えていく。一般的な仕事だけでなく、日々の生活にも役立つことだと思う。
さらに大事なことは、科学の文章作成を学ぶことである。英語の話ではなく、日本語の話である。
散々レポートなどもこなしたことだし、そもそも国語は得意だ!という人もいるかもしれない。
しかし、科学の文章は、これまで習った国語とは全く異なるものになっている。なので、国語的には素晴らしい文章でも科学の文章としてはルール違反になっていることは少なくない。
例えば、
1. 科学の文章では一度言ったことはもう書かない。
2. それ、これなどの指示語を減らす。
3. 比喩などの表現は使わない。
4. 読み手に解釈の余地を残さないようにする。
5. 自然科学では、できる限り主語を人にしない。
など、挙げきらないが、様々なルールがある。これらを破って、自分の内容は素晴らしいはずだ!という願望は残念ながら通用しない。単にルール違反になるだけである。
特殊な高校にいない限り、科学の文章を学ぶことはない。これまで国語は得意だったはずなのに・・と文章作成の壁にぶつかって自信が喪失することも多い。しかし、これまで学んでいないのだから恥じる必要はない。
そして、科学の文章と書いたが、それは内容をいかにシンプルに、誤解の内容に伝えるかであり、すなわち仕事の文章であると言ってもいい。仕事の文章で、物語文のような「まるで◯◯かの如く、A店の売り上げが増加した」とは書かないだろう。
ということで、研究室ではこれまで習っていなかった科学の文章、言い換えれば仕事で使う文章を学ぶことになる。ただし、どこまで深く学べるかは、本人の研究の進捗による。なので、より頑張った人はより学べるという構図である。研究成果がなければ書くことが生まれないので。
こうして研究室では努力すると新しいことを学ぶことができ、どんどんと実力に差がついていく。タフな日々であると思うけれど、新しい能力を身に付けるために、自分のペースを見つけて継続的に頑張って欲しいと願っている。
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