詳しい研究内容は「研究紹介」のカテゴリーで行うが、ここでは簡単な説明を行っていく。
環境バイオテクノロジー研究室では微細藻類の研究を行っている。藻類と言えば、海苔や昆布、ワカメなどが有名である。「微細」とついているだけあって、たとえば昆布のような大型藻類は現時点では扱っていない。要するに、「小さい藻類」の研究を行っているのである。
研究対象の1つがシアノバクテリア(cyanobacteria)である。シアノバクテリアは別名ラン藻、アオコとも呼ばれている。シアノバクテリアと検索すると、水槽での駆除方法などが見つかる。水槽で魚などを飼っていると、緑色になってしまうことがあるが、その原因の1つがシアノバクテリアである。
シアノバクテリアは、「バクテリア」と名付けられているだけあって、細菌、すなわち原核生物である。他の藻類はすべて真核生物になっている。厳密に藻類と言う場合には、シアノバクテリアを外すこともある。
シアノバクテリアの特徴は、酸素発生型の光合成を行うことである。酸素発生型の光合成とは、植物と類似の光合成を行うことであり、すなわち光エネルギーを用いて水を分解し、そのエネルギーで糖を作り、副産物として酸素を発生させることである。他にもサーカディアンリズムを有していたり、フィコシアニンという青色色素を有するといった特徴がある。
一口にシアノバクテリアといっても非常に多様な生物である。もっとも広く使われているシアノバクテリアの1つにシネコシスティス(Synechocystis sp. PCC 6803)がある。この生物は、1996年に全ゲノムが決定され、全生物の中でも3番目にゲノムが決定され、しかも日本独自のプロジェクトであった。日本のゲノム研究に燦然と輝く歴史を持つのである。
シネコシスティスは、淡水性の球菌である。窒素固定は行わない。
直径が1.5~2.0マイクロメートルである。倍加速度が6時間程度と、他の藻類に比べて非常に速く増殖する。
また、もっとも大きな特徴が、遺伝子改変がしやすいことである。相同組換えによって、自分の狙った場所に遺伝子を導入することができる。また、形質転換の際には、プラスミドと細胞を混ぜてプレートに蒔くだけという非常に簡単な操作で良い(自然形質転換 natural transformationと呼ぶ)。
環境バイオテクノロジー研究室では、このシネコシスティスの光合成・代謝制御メカニズムの解明の研究を行っている。また、シネコシスティスを利用して、バイオプラスチックの原料となる化合物や水素などのエネルギー物質の生産法の開発を行っている。
このように、もっとも簡単な酸素発生型光合成生物であるシアノバクテリアを用いて、基礎と応用の両面から研究を進めている。
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