2019年7月26日金曜日

特許=金ではない。

昨日はユーグレナ特許公開の話をしたが、たまたま特許関連の仕事が重なっている。

進んでいるのはシアノバクテリアの方の特許で、こちらは特許登録へと進んでいるところである。特許庁からの拒絶理由通知書への返答・再審査請求の提出が完了した。



前のブログ記事でも書いたが、特許=金と思うのは、(完全にではないが)誤りである。。
特許の進捗はゆっくりと一歩ずつ No.3

言うまでもなく、特許登録とその後のライセンス契約に至り、お金を稼ぐというのも特許の目的だと思う。

一方で、特許出願を重ねることで、特定の会社による知財化ができなくなる。これによって、その分野を自由に研究できるということにもなる。

知財化できなければ、その分野に参入する企業が減ってしまい、市場自体が縮んでしまうのではないか?という懸念もあるだろう。ケースバイケースなので、そういうこともあると思う。

しかし、最近ではトヨタ自動車がハイブリッド車関連の2万3千件(!)の特許を無償で開放するというのがニュースになった。

この理由は簡単で、囲い込んでしまった結果、市場ができず、せっかく取得した特許に意味がなくなってしまったからである。かなり市場の大きそうなハイブリッド車、エコカー関連ですらこんな状況である。いわんや個別の研究分野をや、である。

このように、世の中はオープンイノベーションで自由に研究をして、市場を拡大する方向に向かっている。自由に研究をする権利を確保することはとても大事であると思っている。そんな時に実は特許出願が役に立つのである。

特許出願ではなく、論文化でももちろん良いのだが、論文の場合査読が必要である。論文を作って、査読を受けて、さらにリバイスをして・・・となると、研究成果の公表に1ヶ月単位、場合によっては年単位の時間がかかる。論文は、時間との戦いである知財の権利には向かない代物である(科学の正当性の担保にはとても大事)。

ということで、論文化の前に特許出願をすることで、実は自由に研究をできたりするのである。特許=金!と変に拒絶反応を示していたら、それは誤りだと思う。特許の本来の目的であるライセンス収入を目指している人もいるだろうから、使い方次第ではあるが。

特許の仕組みはとても難しくて、何度聞いてもよくわからない。そして、仕組みの隙をついて戦ったりしているみたいなので、気を抜けないものでもある。大変ではあるけれど、学生でもこういうのに絡むととても良い勉強にはなると思っている。

大学院に進学すると、研究開発職志望の割合が増える。就活の際に、過去のサークルや海外体験の話をすることと、特許出願で弁理士とやりあった話をすることのどちらが響くだろうか。会社によるし、体験にもよるので一概には言えないが、よくある話ではない方が印象に残ることは間違いないと思う。

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