2019年7月20日土曜日

D進は、賭けではない。

昨日博士課程のことを呟いたらレスポンスが多かったので、博士課程について書く。ここでいう博士課程は、いわゆるD1以降のことで、本学では博士後期課程と呼ばれている、修士課程は博士前期課程である。

最近、博士課程に進学する学生(D進する学生)が減っているのは誰もが知っているところ。博士号を取得した後に、食べていけないような話が蔓延してしまい、博士課程に進む学生が激減した。

博士号に進むと早期で学位を取得しない限り、27歳まで学生だし、そこからも安定した職があるかわからないので、二の足を踏む人が多くなっている。

進路に関してはケースバイケースなので、一般論を言うことが難しい。

博士課程に進んでその後自分の欲しいポジションや待遇を手に入れた人もいるし、反対にとても苦しくなった人もいる。なので、その人次第であるとしか言いようがない。あとは個人の優先順位で進路を決定するしかないと思う。

自分の場合だが、博士課程進学には少しも迷わなかった。

よくあるセリフだが、「やって失敗するよりも、やらないで後悔する」方が耐えられなそうだったからである。だって、たった一度の人生で、自分の意に沿わない方を選ぶなんて耐えきれなそうだったからである。要するに単にわがままということなのかもしれない。

しかし、大学院生時代も、「博士号は必須ではないが、やっぱり博士号が欲しい」と、もやもやした顔をした社会人をたくさん見てきたので、自分は最短距離を進むことを考えた。

それに、博士課程に進んだからと言って、そもそも失敗するつもりなんて毛頭なく、「自分は絶対に勝つ!」という気持ちだった(という自己暗示をかけ続けていたというのが正しい笑)。何を持って勝ったというかはよくわからないが、絶対に自分のやりたい仕事を獲得してやるという気持ちは捨てなかった。気持ちだけではなく、それに応じた努力ももちろんしたけれど。そして、実際にポジションを獲得した35歳まではそれはそれは大変な日々だったし。

ただし、博士号に進んだからと言って、別にアカデミックポジションにこだわるわけでもなかった。博士号取得後から断端応用研究にシフトしてきているし、もともとビジネス的な話が好きなので、会社のことも考えたりはしていた。なので、博士号の使い道は常に考えていた。

現在の研究でもそうだし、自分もそして学生たちもそうだがた、うちの研究室では「徹底した自己分析と世の中の流れをつかむこと」を重視している。

徹底した自己分析とは何かと言うと、要するに自分の長所と短所を目をそらさずに把握することである。ここでいう長所・短所は性格、実力、そして実績も含む。

何を当たり前のことをと思うかもしれないが、特に自分の短所を把握することはとても難しい。短所からは目を背けたいし、人から指摘されれば感情的になることも多い。

うまくいっていない人を見ていると、短所の把握がきちんとできていない気がする。「私の短所は真面目すぎるところです」に代表されるように、それ短所じゃないでしょみたいなことしか短所として認められない場合が多いのが実感である。しかし、短所を把握するのはとても大事だと思っている。

例えば、自分の短所は飽きっぽいところで、じっとして座っていることがとても苦手である。デスクワークが増えた現在ではなかなかの短所である笑。

また、すごくせっかちなので、時間を守るが、一方で、最後のチェックが苦手でミスが多い。こういう人は減点法の仕事(成功しても褒められないが、失敗すると叱られる職種)には向いていない。なので、加点法の仕事である研究者は向いているとは思っていた。

さらに、研究業績でいうと、PNASやJBC、Plant Jなどは出したが、Nature、Scienceなどは出していない。なので、こういうトップジャーナルガチ勢がいるような分野で戦っても勝ち目がないと考えた。

一方、特許出願はたくさんあり、特許登録にも複数が進んでいる。現在は、会社との共同研究も複数進めている。こういうところで勝負すれば、勝ち目があると踏んだ。

ということで、徹底的に自己分析をして、あとはどこで戦うかを考えればいいと思っている。現在もこれを続けている。

話が逸れた気がするが、博士課程進学、博士号についても同様で、博士課程で学んだことと博士号の使い道を柔軟かつ徹底的に考えればよいと思っている。その人の進路や興味対象、その時の社会情勢なども絡むので一概にどうすればよいとは言えないのだけれど。

ということでは、博士課程で自分の実力、実績を向上させるのはもちろんのこと、徹底した自己分析をしていけば、正直そんなに進路には困らない気がする。絶対この進路でないとダメという場合には難しいかもしれないが、それは博士課程に限らないだろう(進路やポジションは運の要素もあるので)。

なので、博士課程進学を賭けにするのではなく、日々の努力に加え、徹底した自己分析で、自分の希望の進路に進める確率が上がると思っている。来年度からいよいよ自分の研究室に博士課程の学生が誕生する予定だが、本人とともに徹底的に分析を行い、輝かしい道を歩んでもらうように頑張りたいと考えている。

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