"Modification of photosynthetic electron transport and amino acid levels by overexpression of a circadian-related histidine kinase hik8 in Synechocystis sp. PCC 6803."
Kuwahara A*, Arisaka S*, Takeya M*, Iijima H, Hirai MY, Osanai T.
Front. Microbiol. 2015, 6:1150. *同等貢献
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26539179
この論文からいよいよ明治大学環境バイオテクノロジー研究室の学生が登場してくる。
このHik8は、シネココッカスSasAのホモログである。SasAは、概日リズム(サーカディアンリズム)を作る時計タンパク質であるKaiCに相互作用するヒスチジンキナーゼである。すなわち、時計の情報で伝達するヒスチジンキナーゼである。
シネコシスティスにおいて、Hik8もKaiCとin vivoで相互作用することから、時計の情報を伝達していると考えられるが、詳細は不明である。
前回の論文でHik8過剰発現株を作製し、糖やアミノ酸の代謝が変化することが分かった。代謝とサーカディアンリズムは密接な関係があるため、Hik8の遺伝子改変で代謝が変わることは予想できたことである(ただし、どのように変わるかはいまいち予測できない)。
ところで、サーカディアンリズムに従うのは代謝だけではない。光合成もサーカディアンリズムで変動する。
これはとてもわかりやすく、昼に光合成の遺伝子発現が増加し、夜に減少する。とてもシンプルだが必要な動きだろう。
ともなれば時計の情報を担うと考えられているHik8過剰発現株でも光合成が変化するはずである、というわかりやすい仮説を立て、検証したのが本論文である。
酸素電極やクロロフィル蛍光測定の結果、Hik8過剰発現株では、光合成や呼吸の活性に変化があるとが明らかになった。
光合成活性が増大すれば良かったが、残念ながら光合成活性は低下する傾向にあった。不思議な点であるが、光合成に関連する遺伝子発現は、むしろすべて増加していた。遺伝子発現が増加すれば光合成が強化されるわけではないという、光合成の難しさの一面も垣間見えた。
光合成の研究というのは非常に難しく、植物や藻類を扱っているからできるかというと、そういうわけではない。むしろ難しいので、多くの研究者が避ける分野なのである。
私も光合成の専門家ではないが、酸素電極や簡易的なクロロフィル蛍光測定を駆使して、光合成の解析を行いたいと考えている。
なぜなら、光合成は、地球上の生命を支えている最も重要な化学反応の1つだからである。
ところでHik8は概日リズムを伝えていると述べたが、そのほかにも光シグナルや栄養シグナルが時計には入力されていると考えらえている。このような時計タンパク質を中心としたシグナル伝達にも注目していきたいと考えている。
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